G20閉幕 実効性ある政策設計を

 滑り出しは市場に好感された「アベノミクス」が、岐路に立たされた感がある。モスクワで開かれた20カ国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議は「通貨の切り下げ競争を回避する」との声明を発して幕を閉じた。

 為替誘導にくぎを刺す声明は、各国が厳しい視線を日本に注いでいることを示している。安倍政権は各国の懸念を正面から受け止め、金融政策に偏らない不況克服策をきちんと実行に移すべきだ。
 開幕前、日本側は日本の金融緩和について「デフレ脱却が目的であり、円安は副産物にすぎない」と予防線を張っていた。
 だがメキシコ中央銀行総裁は「日本は通貨安誘導で成長促進を目指している」と名指しで批判した。ブラジル財務相も「『通貨戦争』の存在を認めたくない国があるが、戦争は激化している」と述べた。日本への当てこすりだったのは明らかだ。日本の主張に「理解が得られた」(麻生太郎財務相)とは到底言いがたい。
 安倍政権の経済政策「アベノミクス」は金融緩和、財政出動、成長戦略が3本柱だ。
 このうち最初の金融緩和に対し、為替誘導との批判は今後もつきまとうだろう。国際的な食料・原油価格の高騰を招くバブル効果も、新興国などは警戒している。
 そもそも景気拡大につながるか疑問視する声もある。日銀が通貨供給を増やしても、銀行が民間に融資するなどして市中に資金を流さない限り、デフレ克服にはならない。だが日本の銀行の預貸率は下がる一方で、余ったカネは投資に回らず、例えば銀行が国債での運用に回すなどしているのだ。
 日本の資金流通は「シャワー効果」で上から下に流れ落ちる形でなく、「スポンジ効果」で上層がスポンジのごとく吸収してため込み、下にはわずかなしずくが垂れるにすぎない、と金融緩和の効果に疑念を示す専門家もいる。
 二番目の財政出動も、財政破綻を早めるばらまき復活との疑念はぬぐえない。学校校舎など既存施設の更新投資といった必要な投資に限るべきだ、との意見にも説得力がある。
 期待が先行するアベノミクスだが、こうした懐疑的な意見も無視できない。三番目の成長戦略はいまだ形をなさないが、安倍政権にはこれらの指摘も踏まえた、実効性ある政策を設計してほしい。