いじめ摘発急増 社会が連携して子ども守れ


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 少年事件のうち、いじめが原因の事件で摘発、補導される件数が急増している。昨年1年間だけで前年の2・3倍に当たる260件に上った。

 その背景には全国でいじめ問題が相次ぎ、学校と警察が連携を強めた事情がある。大津市の中2自殺を受け、警察庁も被害者や保護者が犯罪として取り扱うよう求めた場合は、被害届を即時受理する方針という。
 命や身体に危険を及ぼしかねない行為なら、早期に警察に通報する必要がある。子どもたちの命を守ることが第一だ。
 「いじめ」と言うが、一つ一つの行為を見ると形式的に犯罪行為になりかねないものがある。大津市の中2自殺を調べた第三者委員会の報告書によると、被害者は頻繁に暴行を受け、自殺の練習をしろとまで言われていた実態が浮かび上がった。
 学校側がなぜ早期に対策を打たなかったのか、疑問を持たざるを得ない。
 学校現場は従来、教育の問題として警察の介入を避ける傾向があったが、逆にそれが「閉鎖的」との批判を招いている。見て見ぬふりをせず、手に余るようであれば警察への相談や通報も一つの手段となり得る。緊急避難として考えてもいいだろう。
 発達過程にある子どもたちの間では、誰でもいじめる側、いじめられる側になり得る。いじめる側は自分の行為がいじめという認識が薄く、それが未熟さの表れとも言えよう。
 学校の役割としては、それをいじめとして分からせる働き掛けこそ必要であり、自らの行為を考えさせ、成長する機会をつくることも欠かせない。
 いじめがあれば即通報ではなく、お互いの連携の中でどの時点で介入するかなど試行錯誤を重ね、信頼関係を構築すればいい。
 大津市では19日、市議会に提案された「いじめ防止条例」が即日可決された。市は条例に基づき、いじめ対策推進室の設置、弁護士や専門知識のある相談員の常駐、警察官の派遣も検討しているというが、今後、どう実効性を持たせるか問われる。
 肝心なことは学校、家庭、地域がいじめを防ぐために連携し、子どもたちに大人の本気度をはっきり示すことだ。いじめは絶対に許さない、見逃さない。悲しい事件を二度と起こさせない、と。