尖閣問題 日中首脳は未来志向対話を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 中国海軍艦船が1月に東シナ海で海上自衛隊護衛艦にレーダー照射した問題で、共同通信が複数の中国軍高級幹部が攻撃用の射撃管制レーダーを照射したことを認めたと伝えた。計画的作戦との見方は否定、艦長の「緊急判断」による偶発的事案と強調したという。

 中国はこれまで艦船の監視目的のレーダーが使用されたと主張していた。軍関係者が非を認めたことが事実なら、中国指導層に問題の沈静化を探る意向があると見ることもできるだろう。
 ただ、中国国防省はこの件で否定コメントを発表しており、中国の出方は予断を許さない。いずれにせよ、安倍政権は中国側のシグナルを誤りなく分析し、この問題の平和的解決につなげてほしい。
 中国軍高官は日本に対し「過去にこだわらず、未来を志向してほしい」とも述べ、対立の沈静化を求めたという。沈静化の意図は賛同できるが、中国軍部も今回の教訓に十分学ばねばならない。
 射撃管制用レーダーの照射は、発射ボタンを押せば攻撃となる非常事態だ。中国側はこの事実を依然否定しているが、それならばもっと丁寧に調べた上で、国際社会も納得のいく説明をしてほしい。
 一方で、同じ過ちを繰り返さないため、日中両政府は偶発的な武力衝突を回避する実効あるメカニズムを速やかに築くべきだ。
 新国家主席に就任した習近平氏は、人民解放軍に「断固として国家主権、安全、発展の利益を守らねばならない」と指示しており、「海洋強国」の強硬路線を堅持する可能性が高いとみられている。
 周辺諸国は、中国の急激な軍事的台頭や不透明な国防予算の在り方を警戒している。中国はいたずらに東アジアの緊張を高めてはならない。強く自制を求めたい。
 知日派・王毅氏が新外相に起用された。これは日中関係改善を望む中国のシグナルだろう。日本政府はこれを肯定的に受け止め、尖閣諸島問題や深刻な大気汚染など日中間に横たわる問題を協調して解決する好機とすべきだ。
 日中両国が尖閣の領有権をめぐりいがみ合うことは、東アジアの平和と繁栄にとってプラスにならない。日中は領有権の「棚上げ」を含め、戦略的互恵関係の再構築こそ急ぐべきだ。そのためにも、安倍晋三首相と習近平国家主席に首脳会談の早期開催を求めたい。