プロ市場への上場 ベンチャーの未来に期待


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 県内外でステーキレストランなどを展開する那覇市の会社、碧(へき)(西里弘一社長)が、東京証券取引所のプロ投資家向け市場「東京プロマーケット」に上場する。同市場への上場は全国で4社目、県内では初めてとなる。新たな市場を活用して事業拡大を図る同社の挑戦にエールを送りたい。

 東京プロ市場は上場の審査が比較的緩やかで、短期間での上場が可能なベンチャー向けの市場だ。新株を発行せずに上場することもできる。
 資金調達の場であることに加え、新興企業にとっては知名度や信用力の向上、優秀な人材の確保が図れることが大きなメリットだ。碧も当面は資金調達は行わず、まずは企業イメージの向上や人材確保を図り、1年後をめどに資金調達を実施する計画だという。
 市場が狭く、資源や原材料に乏しく、本土と海を隔てたことなどからあらゆるコストがかさむなど、県内企業は多くのハンディを抱える。そうした不利性の克服を目指し、県などはこれまでバイオや情報技術(IT)、環境分野などを新たな「OKINAWA型産業」と位置付け、独創的で新規性の高い技術開発を支援してきた。
 ベンチャーは仮に事業化が実現できても、その後の資金調達が難題だ。沖縄ではファンドや株式上場による資金調達は限られ、金融機関から借り入れる間接金融に頼らざるを得ない。資金面で壁に当たり、多くの企業が成長戦略を描けずにいた。東京プロ市場を活用し、自由度の高い資金を調達できるのなら、大変有意義なことだ。
 昨年7月には県などが東京プロ市場への上場支援会社、沖縄ジェイ・アドバイザーを設立。ジェイ社が上場を手掛けた最初が今回の碧で、年間2社程度の上場を手掛ける予定だ。今後は全国から企業を引き寄せ、沖縄の審査機関を通して中央に進出する「沖縄型上場モデル」の確立を目指す。
 沖縄モデルが軌道に乗れば、県内への企業進出を促す大きな呼び水となるだろう。県は「金融特区」を核とした産業集積にも期待するが、まずは実績を重ねることが肝要だ。東証やジェイ社などの関係者はぜひ東京プロ市場への投資家を増やし、売買を活性化させてほしい。
 自立型経済の達成は、ひとえに民間企業の隆盛にかかっている。数多くの県内ベンチャーが、後に続くことを期待したい。