普天間返還遅れ 長期継続使用は許されぬ


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 日米両政府が4月に発表した嘉手納基地より南の基地返還・統合計画にほころびが出てきた。米海兵隊の施設整備部門責任者のケスラー少将が米上院に対し、普天間飛行場について「少なくとも10年から15年使用する」と証言した。

 返還・統合計画は、普天間の返還時期について、9年後の「2022年度またはその後」と記したが、ケスラー証言は、最短でも返還は23年度以降となることを示したものだ。
 日米合意からわずか1カ月足らずで海兵隊の責任者が最短時期での返還を困難視し、27年度末ごろまで継続使用される可能性に言及したことは重大だ。議会の力が強い米国で、軍当局者が事実と異なる証言をすることは考えられない。
 安倍晋三首相が「沖縄の負担軽減」と胸を張った4月の日米合意自体に虚構が潜んでいるという強い疑念を抱かせる。馬脚を現すとはこういうことを指すのだろう。
 沖縄の米軍基地問題では、日米両政府の合意事項とは異なる米軍当局者の見解が示され、国同士の約束事の信頼性を損なうことが繰り返されてきた。しかも、結果的に日米合意ではなく、軍当局者が明らかにした事実や見通しが的中することがほとんどだった。
 普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備情報に関する米側の対応と日本側の情報隠しが記憶に新しい。
 1999年には在沖米海兵隊の副司令官が普天間配備を明言して以来、2006年には在沖米軍の四軍調整官があらためて明言するなど、米軍側が再三配備情報を示したが、日本政府は隠ぺいもしくは、具体的な確認を避け続けた。
 嘉手納基地より南の5基地の返還計画は、そもそも05年の米軍再編合意時に不明確だった返還時期を示したにすぎない。5基地の返還時期を「○○年度またはその後」と留保したことに対し、当初から返還が延び延びになるのではないかと危ぶむ声があった。
 対米折衝に臨んだ安倍政権が「沖縄の負担軽減」に努力したように印象操作するため、実効性が乏しいまま、合意にこぎ着けた「政治ショー」だった内実が早くも露呈した格好だ。
 危険極まりない普天間飛行場の長期の継続使用は、固定化そのものであり、許されない。日米両国は沖縄社会が反発する県内移設を選択肢から外して仕切り直し、早期かつ確実な返還に歩むべきだ。