対北朝鮮外交 5ヵ国の足並み乱すな


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 安倍政権は対北朝鮮外交をどうするのか。飯島勲内閣官房参与が訪朝日程を終え帰国したが、協議内容を十分に説明していない。

 朝鮮半島の非核化を目指す6カ国協議のメンバーである日本、米国、韓国、中国、ロシアの5カ国は北朝鮮に繰り返し核開発の放棄と拉致問題の解決を迫ってきた。
 日本が拉致問題の解決へ向け、圧力と対話のバランスに配慮し交渉する意義は理解できる。その一方で非核化に向けた日米韓中ロ5カ国の結束も乱してはなるまい。
 飯島氏は、北朝鮮ナンバー2の金永南最高人民会議常任委員長や朝鮮労働党の金永日書記(党国際部長)と会談した。これが日朝首脳会談の布石となるか注視したい。
 オバマ米政権は日朝の対話ムードの先行で、「北朝鮮の非核化」実現に向けた各国の結束に悪影響が出ないか懸念を強めている。米国にむやみに追従することはない。ただ、拉致問題でこれ以上の迷走を避けるためにも、安倍政権は北朝鮮に5カ国の足並みの乱れを突かれないよう注意を払うべきだ。
 北朝鮮は挑発的言動をトーンダウンさせているが、核を放棄したわけではない。このため、米政府は北朝鮮が挑発停止の「見返り」を手にした途端、約束を破り核開発を進める「瀬戸際外交」を打ち破るため、非核化に向けた北朝鮮の誠実な行動を厳しく要求している。北朝鮮も自国民の幸福を真に願うなら、関係改善の足かせである「瀬戸際外交」と決別すべきだ。
 米政府は、このほど実施された中国の国有大手、中国銀行による北朝鮮口座閉鎖を称賛している。中国の制裁強化が北朝鮮の挑発的言動の沈静化に効果的だったことを米側が認めたことを意味する。
 韓国政府は、北朝鮮が操業停止に追い込んだ南北経済協力事業、開城工業団地の再開などを話し合うため、無条件の南北対話を呼び掛けている。米側も強力な抑止力を維持しながら南北の緊張緩和を目指す朴槿恵大統領の「朝鮮半島信頼プロセス」を支持している。
 これに対し日本の戦略は分かりづらい。飯島氏が全ての拉致被害者の即時帰国を求めたのは当然だ。だが、他の4カ国は核問題を棚上げした拉致問題交渉の進展は想定していまい。安倍政権は拉致問題の解決と北朝鮮の核放棄をどう両立させるのか、国民と国際社会への説明責任を果たすべきだ。