参院選・震災復興 「機能不全」の責任自覚を


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 この国の立法府と政府は機能不全に陥っている。それをまざまざと見せつけたのが東日本大震災であった。各政党は痛切に反省してもらいたい。参院選では復興への道筋をこそ競うべきだ。

 機能不全は歴然としていた。阪神大震災の際は関東大震災と比べて立法措置が遅いと批判を浴びたが、東日本大震災はそれよりもさらに遅れた。40日以内に成立した関連立法が8本あった「阪神」に対し、「東日本」はゼロだ。原発事故もあったというのは言い訳になるまい。
 その結果、例えば仮設住宅の建設は神戸市では「阪神」後200日で3万戸だったが、「東日本」後の仙台市は100日で1500戸にとどまる。「阪神」では被害が神戸に集中したから県もそこに注力できたが、「東日本」は被害が広大で、県が一自治体の突出を恐れた結果だ。それなら政令指定都市は県に頼らず自ら建設できると法改正すればよかったが、立法府は機能せずじまいだった。
 「みなし仮設」の手続きも同様だ。新規のプレハブ建設より、既存のアパートの空室を代用した方が効率的で環境面でもいい。そのため「みなし仮設」は「東日本」で初めて本格活用された。
 だがその手続きは被災者・大家・市・県などの間で10種の文書が16回も行き来する複雑ぶりだ。職員が忙殺される自治体は悲鳴を上げ、簡素化を要望したが、立法府も政府も黙殺した。被災地の自治体は人手不足が取りざたされたが、機能不全による「人災」に等しい。
 日本の災害法制は大規模災害のたびに継ぎ足してきた。だから時代遅れの規定が今も生き続ける。例えば金銭支給が迅速で合理的なのに、終戦直後の物資不足時にできた「現物給付の原則」が厳然と残る。各党はこうした法制度の在るべき姿も探ってもらいたい。
 復興はいまだ遠い。復興予算の他地域への「流用」が批判されたが、それも復興遅れの一因だろう。監視できなかった点でも立法府の責任は重い。
 被災地では今も30万近い人が避難生活を余儀なくされる。居住を許されない福島沿岸部の街以外でも、事業所が減り、雇用が失われた結果、人口減少率が2割を超える地域もある。定住を上向きにすることが何より復興につながろう。医療・教育の充実が不可欠だ。各党はそうした復興のアイデアと将来像を示し、論戦してほしい。