県民大会1年 自己決定権の論議深めよう


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  「この空は、私たちのもの」-。あの日から1年が過ぎた。残念ながら日米両政府はその思いと真摯(しんし)に向き合おうとしないが、新たな運動の模索も始まっている。

 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に反対する県民大会が開かれたのは昨年の9月9日だった。約10万1千人(主催者発表)が集まり、「県民はこれ以上の基地負担を断固拒否する」との決議を採択。配備計画の撤回と普天間の閉鎖、撤去を両政府に強く求めた。
 大会の実行委員会と県内全市町村の代表は今年1月、配備撤回と普天間の県内移設断念を求める建白書を安倍晋三首相に提出。仲井真弘多知事も繰り返し配備の見直しを求め、県議会と全市町村議会も配備反対を決議したことは、重ね重ね指摘してきたところだが、沖縄の声は無視され続けている。
 民主主義の手だてを尽くした国民の要求を一顧だにせず、外国政府に追従し、重大事故が絶えない軍用機の配備を強行する。強い憤りと同時に、日本政府への深い失望を抱き続けた1年でもあった。
 9月8日はまた、基地の整理縮小と日米地位協定見直しの是非を問う1996年の県民投票から17周年となる日だった。都道府県単位で初めてとなる住民投票で、投票率は59・53%。賛成票が約9割と、全有権者の半数を超えた。沖縄への基地集中や在日米軍への特権の付与に県民が「ノー」の意思を示した点で歴史的だったが、県民が自らの将来を自分たちで決めていくという自己決定権について、理解を深める契機にもなった。
 オスプレイに反対する民意をないがしろにした政府が、沖縄に思わぬ効用をもたらしたものがあるとすれば、県民に自己決定権の重要性を再確認させたことだろう。
 自治権をめぐる世界の事例に詳しい島袋純琉球大教授は、オスプレイ配備問題に関して「在沖基地の使用や移設に関する立法権」などを例示し、県議会などでの議論の必要性を提起している。
 オスプレイの配備撤回に向けて、県内の行政・議会5団体は新たな行動を検討している。全国行脚や訪米要請などのアイデアが上がっているほか、「国連など国際社会への働き掛け」(島袋教授)を求める意見もある。
 県民は歩みを止めてはいない。配備撤回に向けた粘り強い取り組みと併せて、自己決定権に関する議論の深まりにも期待したい。