日米合意逸脱 全機撤収こそが解決策


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 昨年9月の日米合同委員会の合意をもう一度確認してみたい。

 「午後10時から午前6時までの間、飛行および地上での活動は、運用上必要と考えられるものに制限される。夜間飛行訓練は、在日米軍に与えられた任務を達成し、または飛行要員の練度を維持するために必要な最小限に制限される」
 垂直離着陸輸送機オスプレイを米軍普天間飛行場に配備するに当たり、両政府が交わした覚書の一節だ。だがそのオスプレイが19日まで4日連続で、午後10時を大幅に超えて飛行した。ルールを逸脱した運用が常態化しつつあり、由々しき事態だ。
 昨年10月の配備から夜間飛行は繰り返されてきたが、今年6月に3日連続で10時以降に飛行した際、米軍は防衛省を通じて「任務の達成と要員の練度維持に必要最小限の訓練。合同委員会合意違反には当たらない」と説明している。
 「必要最小限」などの抜け道が用意された安全対策が実効性に乏しいであろうことは、当初から予測されていたことだが、合意文を盾に、木で鼻をくくったような説明には憤りさえ覚える。
 そもそも10時~6時の飛行制限は、1996年に合意された嘉手納、普天間両基地に関する日米間の騒音防止協定(騒音規制措置)に基づく約束だ。だが人口密集地の飛行回避などの項目も含め、骨抜きの協定であることは何度も指摘してきた。昨年9月の安全策合意もすでに形骸化している。
 今回の夜間飛行について、小野寺五典防衛相は米側から「運用上の理由で詳細は提供できない」との回答があったと説明した。野放図な運用に歯止めをかける気があるのか。無気力ぶりが情けない。一方で政府は、オスプレイを使った日米共同訓練を行う滋賀県などには夜間訓練はしないと伝えている。この二重基準は一体何なのか。
 8月に追加配備されたオスプレイは本格的に運用を拡大しつつあるが、連夜の騒音に悩まされた伊江島では酪農牛の早産や突然死なども報告され、住民を不安がらせている。
 政府は配備撤回を求める民意を無視する一方で、昨年の日米合意の際には「新たな課題が生じれば、すぐに合同委で協議する」と約束したはずだ。だが、今やその配慮さえ感じられない。駐留自体に無理がある。重大事故や騒音被害の絶えないオスプレイは、やはり広大な米本国の基地へ撤収すべきだ。