「脈絡」発言 日米は辺野古断念決断を


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 仲井真弘多知事が県議会で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に必要な政府の埋め立て申請を拒否することを示唆した。まだ判断はしていないと説明しているが、県外移設の知事公約に照らせば、拒否の方向はごく自然だろう。

 知事は26日の答弁で、沖縄防衛局が提出した埋め立て申請に対し「これまで申し上げてきた流れに沿った脈絡の中でのものになろう」と表明した。与党の自民議員への答弁だ。
 知事は2010年の選挙で、条件付きで県内移設を容認するとしていたそれまでの立場を変え、県外移設を掲げて再選を果たした。さらに言えば1期目の途中から、民主党政権発足や移設に反対する名護市長の就任などを受け、「受け入れは極めて厳しい」「県内移設は不可能に近い。拒否の選択肢もある」などと繰り返してきた。
 最近は「ほかの都道府県の既に滑走路がある場所への移設が合理的で早期に問題を解決できる」とも強調している。今回の「脈絡」発言に対しては「今の段階でああだこうだと申し上げる時期ではない」と説明したが、知事発言のそれこそ脈絡をたどれば、申請拒否の結論が自然と導き出されよう。
 注目されるのは「政治的判断は当然のこと。むしろやるべきものと考えている」とも答弁し、従来の「政治的な判断は否定されるものではない」とのトーンを強めたことだ。7月に共同通信と本紙が行った県内世論調査では78%が辺野古移設に反対している。客観的情勢を踏まえた政治的判断を念頭に置いているものと受け止めたい。
 さらに知事が今回、十数年来の普天間問題の経緯に関して「日米双方で実務、技術的レベルの判断が政治を振り回している。高いレベルで政治的に解決すべきではないか」と指摘した点は重要だ。
 沖縄の米軍基地問題をはじめとした日米の安保問題は、「ジャパン・ハンドラーズ(日本対策屋)」と称される一握りの米当局者と、それに追従する日本の外務、防衛官僚が長年取り仕切っているが、その結果が今日までの普天間問題の迷走だ。
 来週には外交・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)がある。両政府は今こそ政治的解決に踏み出すべきだ。実現性のない辺野古合意の呪縛から離れ、早期返還に向けて普天間の閉鎖・撤去、県外・国外移設への方針転換をためらってはならない。