TPP交渉 脱退も選択肢の一つだ


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 日本包囲網がいよいよ狭まってきた。日米など12カ国が年内妥結を目標に掲げる環太平洋連携協定(TPP)交渉のことだ。

 日本は、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物の重要5項目を「聖域」と位置付け、関税を死守する方針だ。しかし、米国を除くシンガポールやカナダなど10カ国が日本に対し、コメを含む農産品や工業品の関税を全て撤廃するよう求めていることが分かった。
 米国もコメを除き関税を全て撤廃するよう日本に要求している。甘利明TPP担当相は米通商代表に対し「それはできない」と拒否したが、「聖域」の全てをどう守るか、厳しい交渉を迫られよう。
 仮にサトウキビの関税が撤廃されれば、沖縄農業への打撃は計り知れない。特に離島の基幹産業はキビを中心とする農業と製糖業であり地域社会が崩壊しかねない。関税撤廃に反対する。
 TPP参加の是非については国論を二分したままだ。安倍晋三首相は今年3月の日米首脳会談で、「聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認した」と交渉参加を独断で決めた背景がある。「聖域」を守ることは、国民に対する最低限の約束と言えよう。実際、衆参両院の農林水産委員会は、5項目を関税撤廃の例外とするよう求める決議をしている。交渉参加国の圧力に屈し、日本が「聖域」の関税で譲歩することは決して許されないと銘記すべきだ。
 そもそもTPPは関税を扱う物品市場アクセスのほかに、医療、労働、金融サービス、知的財産、非関税障壁など21分野に及ぶ。それこそ「国のかたちを変える」と懸念されるが、交渉は極端な秘密主義で情報は開示されず、全体像はベールに包まれたままだ。
 交渉を主導する米国でも、オバマ政権がTPPを発効させるのに必要な「大統領貿易促進権限」法案の年内成立が困難視される。議会に対し通商交渉結果の丸のみを迫る内容のため、「議会との協議軽視」と与野党に反対論が広がっているためだ。
 交渉参加国は19~24日に首席交渉官会合、12月上旬に閣僚会合を予定するが、年内妥結にとらわれることなく協議を尽くすべきだ。
 自民党は「聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は脱退も辞さない」と決議している。安倍首相は交渉脱退も選択肢とすべきだ。