性暴力被害者 利用者本位の拠点へ英知を


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 性暴力被害者の生きる力を下支えする態勢づくりに、専門家や県民の英知を集めたい。県が2014年度中の設立を目指す「ワンストップ支援センター」のことだ。

 支援センターは、性暴力被害者が医療や法律などあらゆる相談を行える包括的受け皿として全国で整備が進みつつある。県内でも「沖縄に『ワンストップ支援センター』設立を強く望む会」(金城葉子、田中真生共同代表)を中心に、設立機運が高まっている。
 今月3日には同会主催のシンポジウムが那覇市内で開かれ、「被害者の声が生かされた世界レベルのセンター設立を」といった、さまざまな意見が提起された。
 利用者本位の持続的な支援を世界水準で-との志は十分うなずける。その実現のためにも、有効に機能する設置形態の検討と併せ、より深くセンター設置の意義を理解し、後押しする機運を県民の間にさらに広げていく必要がある。
 その意味で、3日のシンポジウムに登壇した関係者の提起はどれも傾聴に値する指摘だった。
 精神科医の竹下小夜子氏は「被害者の落ち度論は、無意識のうちに社会が被害者に不合理な恥意識を追わせている。それは社会の責任として考えるべきだ」と述べた上で、支援センターが暴力を許さない意識を啓発する拠点にもなり得ると指摘した。ほかの専門家からも、スウェーデンの公訴時効制度や米国の支援拠点の充実ぶりなど示唆に富む提起があった。
 県は、開設を検討している「ワンストップ支援センター」について、病院拠点型で24時間365日対応可能な機関とする提言を先月下旬にまとめた。実現すれば、全国でも初めて公費で24時間運営する支援センターとなるという。
 引き続き被害当事者や専門家の意見、国内外の事例を参考にしながら、より良いセンターの理念、運営方法を編み出してほしい。
 産婦人科医や心のケアを担当する支援員(アドボケーター)など専門スタッフの確保、拠点病院と医師会の連携など課題は少なくないだろうが、予算・人員の投資を惜しまず、県民の参画も募りながら、万全の運営基盤を確立すべきだ。
 心に深い傷を負った方が希望を取り戻し、安心して暮らせる社会は、全ての人にとって優しい社会となろう。社会全体で望ましい支援の在り方を考えたい。