那覇市議会意見書 民主政治の真価示した


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 米軍普天間飛行場の返還・移設問題で、那覇市議会は政府の名護市辺野古沿岸埋め立て申請を承認した仲井真弘多知事に抗議する意見書を賛成多数で可決した。

 知事判断に対する県内議会の異議申し立ては、これが初めてだ。県民の思いをくみ取った市議会の良識ある行動として評価したい。
 仲井真知事は昨年12月の県議会で「日米両政府に普天間の県外移設、早期返還の実現を強く求めていく。県外で探さないと現実的にはならない」と答弁していた。
 今回の承認と答弁は明らかに矛盾する。しかし知事は6日の記者会見で「(辺野古移設は)実現可能性の問題で非常に厳しいと言ってきたが、反対したことはない」と弁明した。県外移設公約は虚構だったと自白したに等しい。耳を疑った県民も多いだろう。
 これとは対象的に、那覇市議会の取り組みは政治家としての矜持(きょうじ)を示したといえる。昨年7月の那覇市議会議員選挙で当選した議員の大半が県外移設を公約に掲げていた。意見書可決はまさに自身の公約を忠実に守り通したものだ。
 市議会は、県内41市町村の全首長や議会議長、県議会議長らが連名で普天間の県内移設断念を安倍晋三首相に要請した「建白書」に反するとして仲井真知事を指弾した。民主的手続きを重んじるのは、議会人として至極当然だ。
 しかし、あろうことか、自民党県連は市議会の同党所属議員に対し意見書に賛成しないよう水面下で圧力を掛けた。可決後は賛成した議員の処分を検討している。
 県外移設公約を事実上撤回して辺野古移設容認に転じた県連が、公約を死守した市議を処分するのは倒錯した行動というほかない。
 仲井真知事の埋め立て承認後に琉球新報社と沖縄テレビ放送が実施した緊急世論調査では知事承認への不支持が61・4%に上った。支持34・2%の倍近くだ。普天間飛行場の県内移設への反対意見は73・5%に達した。
 市議会の意見書は県民世論とも合致し、民主的正当性を有する。
 意見書は、埋め立て承認で県外の人々に広まったであろう「沖縄県民は金で転ぶ」との印象を払拭(ふっしょく)し、首相に対し「140万県民を代表して感謝する」と述べた知事発言の欺瞞(ぎまん)性も突いた。民主政治の真価を示した歴史的決議として、高く評価されるべきものだ。

→那覇市議会意見書全文 6日可決 辺野古承認に抗議