冷凍食品農薬混入 一刻も早く真相の究明を


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 マルハニチロホールディングスの子会社アクリフーズの群馬工場で製造した冷凍食品から農薬「マラチオン」が検出され、同食品を食べて体調不良になったと訴え出た人が全国に広がっている。

 同社が先月29日に農薬検出を公表してから2週間近くたつが、全容解明はおろか混入経路さえ判明していない。食への信頼と安全を揺るがす事態であり、真相究明が急がれる。
 9日までにマラチオンを検出した7商品9個のうち、濃度はコロッケ1商品が残留農薬基準の150万倍、別のコロッケ1商品の衣が260万倍だった。
 製造工場内でマラチオンは使われておらず、検出濃度も高いことから何者かが意図的に混入した可能性がある。群馬県警は、業務妨害より罰則が重い流通食品毒物混入防止法違反罪の適用も視野に入れているとされるが、迅速かつ厳正に捜査し、消費者の不安を一刻も早く払拭(ふっしょく)してもらいたい。
 一方、アクリ社の対応にも問題が多い。「異臭がする」との苦情を昨年11月以降に複数把握し、12月27日に農薬を検出しながら、公表は同29日に遅れた。しかも当初は「子どもが一度に60個食べなければ影響はない」と説明していたが、「8分の1個」と訂正。厚生労働省などに問い合わせず健康基準を独断で解釈していたためだ。
 消費者への周知の遅れは安全軽視と批判されても仕方あるまい。これまでも食品業界では製品を自主回収するケースがたびたび起きているが、こうした教訓を生かせず、農薬混入を許した危機管理体制も厳しく問われよう。
 群馬工場製の食品を食べて下痢や嘔吐(おうと)などの体調不良を自治体に届け出た人は、47都道府県で少なくとも1400人を超えたことも共同通信の集計で判明している。
 食品トラブルの因果関係を特定するのは難しいとされるが、専門家がアドバイスするように、気になることがあれば、ためらわずに最寄りの保健所や消費生活センターに相談することが賢明だ。国も情報収集に努め積極的に消費者に提供すべきだ。
 マルハニチロは約640万パックを自主回収中だが、7日現在、回収率は3割弱にとどまる。冷凍食品は買い置きが利くだけに、各家庭で対象食品がないか再度、点検することも必要だ。特に一人暮らしのお年寄りには、周囲が声掛けするなど注意を促したい。