自民党運動方針 憲法の根幹を掘り崩すな


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 「積極的平和主義」の美名の下、国民が望みもしない「戦争をできる国」づくりを急ぐのが本音ではないか。そんな疑問を拭えない。

 自民党が2014年運動方針「『日本を取り戻す』飛躍の一年」を党大会で採択し、日本再生への積極的な政策展開を打ち出した。
 成長戦略や国土強靱(きょうじん)化などの文言が目を引く一方で、見過ごせないのは日本国憲法の平和主義に関わる言及を弱め、憲法観や歴史認識で保守的な「安倍色」をにじませた点だ。
 例えば、運動方針の原案にあった「平和憲法を堅持する従来の趣旨を損なうことなく」との記述が削除され、「時代に即した現実的な憲法改正を行う」となった。
 靖国神社参拝との関連では当初は「国の礎となられた方々に哀悼の誠をささげ、不戦の誓いと平和国家の理念を貫く」としていたが、実際の方針では「国の礎になった方々に対する尊崇の念を高め、恒久平和への決意を新たにする」となり、「不戦の誓い」が消えた。
 昨年末の安倍晋三首相の靖国参拝に国際的非難が強まる中、政府は外交チャンネルを通じ参拝の意図を「不戦の誓いをするため」と説明している。にもかかわず党方針から「不戦の誓い」を削除すれば、諸外国は言行不一致と捉えよう。
 首相は昨夏の全国戦没者追悼式でも「不戦」に言及しなかった。これでは「戦争できる国」づくりが本音と疑われても仕方ない。
 安倍政権は先月、外交と安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」と今後10年間程度の国防の指針「防衛計画の大綱」、5年間の予算の枠組みを定める中期防衛力整備計画を同時に決定した。
 安保戦略は、積極的平和主義の文言で「国際社会の平和と安定」への寄与を掲げた。だが、内実は軍事的台頭の著しい中国や核開発を続ける北朝鮮を脅威と位置づけつつ、わが国の安保環境の厳しさを強調し、武器輸出三原則緩和や自衛隊増強、国防費増額に道を開く軍事色の濃い戦略となっている。
 積極的平和主義は、憲法解釈で禁じられた集団的自衛権行使の容認を目指す。自民運動方針は、積極的平和主義の支援も打ち出した。憲法の平和主義や国是の専守防衛の形骸化は、到底容認できない。
 国民は、首相に「戦争できる国」への転換を託してはいない。憲法の根幹を着々と掘り崩す安倍政権の手法に危うさを禁じ得ない。