東京都知事選 原発施策の信任ではない


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 人口1300万人を超える巨大首都のさまざまな課題への処方箋とともに、国の将来像も問われた東京都知事選で、元厚生労働大臣の舛添要一氏が初当選した。

 都知事は、石原慎太郎、猪瀬直樹の2氏が続けて任期中に辞職しただけに、2020年の東京五輪を控える中、都政の混乱に終止符を打ちたいという有権者の安定志向が反映した結果と言えよう。
 政権与党の自民、公明の両党から総力を挙げた支援を受け、舛添氏は手堅く支持基盤をまとめた。急速に進む少子高齢化が都政に影を落とす中、厚労相を務めた経歴も票を引き付けたとみられる。
 「即時原発ゼロ」を公約に掲げ、「脱原発」を争点の一つに押し上げた元日弁連会長の宇都宮健児氏と元首相の細川護熙氏は及ばなかった。細川氏は、国民的人気が高い小泉純一郎元首相の全面支援を受けたが、風は吹かなかった。
 「脱原発」の機運が高まることに危機感を抱いた安倍政権の意向が働き、舛添陣営は争点化を避ける戦術を徹底した。序盤は原発問題に極力触れず、中盤から「中長期的な脱原発依存」を訴え、「脱原発」との違いを薄めようとした。
 有権者に争点を聞いた共同通信の出口調査によると、「原発・エネルギー政策」は、「少子高齢化・福祉」「景気と雇用」に次ぐ3番目にとどまった。「脱原発」は争点からかすみ、舛添氏を利した。
 だが、宇都宮氏と細川氏の得票は合わせて4割に上る。電力需要の約1割を占める大消費地・東京で、「脱原発」を掲げた候補者が一定の支持を集めた意義は大きい。
 さらに興味深いのは、伊方原発(愛媛県)の再稼働の是非で揺れる四国4県の県紙などが実施した世論調査で、細川氏の「原発ゼロ」政策を49%が支持し、不支持の39%を10ポイント上回ったことだ。原発再稼働に不安を抱き、「脱原発」を望む民意が、首都でも原発立地地域でも広がりを見せているのだ。
 政府・与党は「脱原発」の争点化回避に血まなこになっただけに、選挙結果は安倍晋三首相が目指す原発再稼働にお墨付きを与えたわけではない。民意を無視した原発施策に突き進むことはあってはならない。
 投票率は46・14%にとどまり、前回を16ポイント余も下回る過去3番目の低さだった。政治不信がその一因であることは間違いあるまい。政府と主要政党に反省を求めたい。