「格段に安全」 知事は誰の代弁者なのか


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 仲井真弘多知事が県議会で米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設について「普天間のように街の真ん中にあるのに比べ、格段に安全で、騒音が改善される」と述べた。

 辺野古移設を推進する日米両政府の代弁者のような答弁に、多くの県民が驚いたに違いない。
 移設計画の埋め立て申請を承認したことについて、知事は県議会調査特別委員会で「法律的には承認せざるを得ない」と述べ、あくまで事務的な手続きであることを強調していた。そして自身の2期目の公約について「県内がノーとは言っていない」としつつも「県外が早いから県外が良いとの公約だ」と述べ、県外移設の公約は下ろしていないとの立場を示していた。
 しかし今回の答弁は、埋め立て承認だけでなく、辺野古移設自体を積極的に評価する内容だ。県内移設の推進と受け取るほかない。
 米軍機の運用についても「海から海に出て行き、(飛行する)下に民家は外しているという。それなりに安全の工夫をしている」と答弁した。日本政府が沖縄に繰り返してきたこの説明は既に破綻している。周辺住宅地に極力近づかない「台形」で飛行するとの経路は、実は日本政府が勝手につくりあげた説明であることが米側の指摘で明らかになっているのだ。
 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、米軍による環境審査書によれば、少なくとも県内25市町村の上空を日常的に飛行する。
 県が昨年10~11月の2カ月で市町村と連携して実施した目視調査でも、人口密集地の飛行など日米合意に違反する飛行が336件も確認された。「安全対策」が虚構でしかないことは、とうに実証されている。知事はこうした事実をどう受け止めているのか。
 知事は2011年9月、訪米時の講演でこう訴えた。「県内移設は事実上不可能」「他の都道府県への移設が合理的かつ早期に課題を解決できる」。今回の答弁がそれと矛盾するのは明らかだ。もはや知事の答弁は著しく論理性を欠いている。
 知事の埋め立て承認直後に琉球新報などが実施した県民世論調査では、県外・国外移設や無条件閉鎖・撤去を求める意見が73・5%を占めた。今回の答弁は県内移設を認めない沖縄の民意に背を向けるものとしか思えない。仲井真氏が県民を代表する知事の職にとどまる資格が果たしてあるだろうか。
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