F15風防落下 危険な欠陥機は飛行中止を


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 被害がなかったことは偶然にすぎない。一体いつまで沖縄は理不尽な危険にさらされ続けるのか。

 米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が沖縄本島北西約130キロの東シナ海上空で訓練飛行中、操縦席を覆うカバー(風防)が外れ、海に落下した。乗員にけがはなく、船舶への被害も確認されていないが、一歩間違えば大惨事となりかねない事故だ。
 風防はアクリル製。緊急時に着脱が可能で、重さは少なくとも113キロある。今回の事故機は風防落下後、嘉手納基地に戻って緊急着陸するまで操縦席がむき出しのまま飛行していたことになる。その影響は測りかねるが、異常な状態であることは明らかだ。
 米軍を監視する市民団体「リムピース」の頼和太郎氏によると、事故機は1984年の製造、調達で、嘉手納所属のF15約50機の中では新しい部類だ。「この機体が事故を起こすなら古い機体が事故を起こす可能性は一層高い」(頼氏)との指摘を深刻に受け止めなければならない。落下が海上だったことは偶然にすぎないのだ。
 79年から常駐配備された嘉手納のF15はこの35年間で9回、計10機が墜落している。老朽化も指摘されており、県民にとっては危険な欠陥機だと言わざるを得ない。
 F15は昨年5月にも本島東海域で墜落した。その原因について今年1月、米軍は油圧式の飛行制御補助システムが故障し、機体を操作できなくなったためと説明したが、そもそもの故障の理由は分からないと説明している。
 米軍は昨年の墜落の際、地元が原因究明までの飛行中止を求めたにもかかわらず、発生2日後に飛行を再開した。県民の反発を招いたことは言うまでもない。
 今回の事故に対し、県や周辺自治体、地域住民などは機体の整備をはじめ米軍の安全管理体制に疑問を呈し、原因究明と安全確認までの飛行停止を求めているが、これは最低限の要求だ。事故を受け、米軍はF15の飛行を一時的に停止したが、5日には米本土の基地所属とみられる別のF15が飛来した。県民の切実な要望を無視するものであり、決して許されないことだ。
 日本政府は事故に対し、「大惨事につながりかねず、極めて遺憾」として在日米軍に再発防止を申し入れた。毅然(きぜん)として飛行停止を求めるべきであり、主権国家としての主体性を今こそ発揮すべきだ。