無観客試合 差別撲滅に立ち向かうとき


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 「JAPANESE ONLY」-。サッカーJ1の浦和サポーターが「日本人以外お断り」と解釈できる人種差別的な横断幕を掲げた問題で、Jリーグは浦和に無観客試合の処分を下した。

 横断幕が掲げられた8日の鳥栖戦で試合終了まで問題を放置した浦和の企業責任は重大だ。サポーターの意図がどうであれ、外国人など受け手の痛みに重きを置いたJリーグの処分は評価できる。
 背景には、差別撲滅を掲げる国際サッカー連盟(FIFA)の方針や、在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチ(憎悪表現)が競技場に持ち込まれることへの危機感があることは間違いないだろう。
 Jリーグ規約ではJリーグ関係者の順守義務(第3条4項)として、人種、性、言語、宗教、政治などを理由とする国家、個人または集団に対する差別を禁じている。
 規約違反への制裁は除名、降格、出場権剥奪、勝ち点減など9種類ある。今回の制裁は5番目に重いが、規定に照らせば唐突ではない。むしろ人種差別的表現を止められなかった、日本社会の事なかれ主義、あしき寛容さこそ問題だろう。
 欧州では反ユダヤ主義と関連づけられるポーズや黒人選手への口汚いやじなど人種差別が後を絶たない。このため、統括団体の欧州連盟(UEFA)や各国協会が差別行為への対策に厳しい姿勢で臨み、厳罰化の流れが進んでいる。
 山田健太専修大教授(言論法)によれば、人種差別表現や子どもポルノは最初から憲法の保障外、表現の自由の土俵から外され、「はじめから社会に存在することが許されない表現行為」との理解が国際的な常識だ。欧米で反ユダヤ主義などに根差したナチズムが厳しく指弾されるのはそのためだ。
 一部の浦和サポーターが試合会場に韓国で「侵略の象徴」と見なされる旭日旗を持ち込んできた経緯も踏まえると、今回の横断幕問題はヘイトスピーチなど社会風潮とも無縁ではなかろう。Jリーグとサポーターは問題点の検証と差別撲滅に本腰を入れて取り組んでほしい。
 競技者のモラル、観戦者マナーの確立を急ぎ、あらゆるスポーツから人種差別や排外主義を一掃すべきだ。「日本は人種差別をする国」との見方が世界に広まらないよう、国民全体で危機感を共有したい。差別を見て見ぬふりをする日本社会であってはならない。