G8ロシア排除 外交解決を模索すべきだ


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 東西冷戦後の世界秩序が大きく揺らぎ、崩れつつある。

 先進7カ国(G7)は緊急首脳会合で、ウクライナのクリミア共和国の編入を強行したロシアを主要国会合(G8)から一時除外する「ハーグ宣言」を採択した。
 6月にロシアのソチで予定されるG8首脳会議を欠席し、代わりのG7首脳会議を開くことも決めた。クリミア編入後、G7が取った最も強い対応である。
 クリミア編入は、ロシアが自国民保護を名目にして独立国家ウクライナの主権を侵し、領土拡大?を図るものだ。帝国主義そのものと言っても過言ではない。「明白な国際法違反は、世界中の法の支配に対する深刻な挑戦だ」。ハーグ宣言のロシア批判は的を射ている。
 国際社会が結束して対抗措置を取ることは当然である。ロシアのプーチン大統領は、平和な世界秩序の維持、拡大を求める世界の声に耳を傾け、強硬姿勢を改めてクリミア編入を撤回すべきだ。
 一方、ロシアを孤立に追いやることで“新たな冷戦状態”を招くことは避けねばならない。宣言は、話し合いによる解決の道筋は開かれているとも言及した。ロシアも、懸念されるウクライナ東部への侵攻はないと明言している。
 G7を軸に、ロシアとの対立の先鋭化を防ぎつつ、外交解決の道を模索してほしい。
 クリミア編入は、力による領土併合にほかならない。ウクライナ国内の議論が尽くされず、ロシアの軍事力をバックにした性急な住民投票を受けて強行された。
 ロシアは、編入支持派が多数を占めたクリミアの住民投票は有効と言い張る。ロシア系住民の多さからすれば、性急に住民投票を強行せずとも、編入支持派が多数を占めたはずだ。
 クリミア問題の決着には、ウクライナ憲法にのっとった、時間をかけた民主的手続きが欠かせない。
 ソ連が崩壊した後、ロシアは1998年からG8に名を連ね、欧米諸国と共通の価値観を追求してきた。国際協調により世界の安定を目指す営みの価値を見詰め直したい。
 G7とロシアの対立は強まったが、領土や経済的利権の保持を前面に振りかざす対立をこれ以上激化させてはならない。北方領土問題を抱える日本も主体的に行動し、国際協調の回復に向けた役割を果たしてもらいたい。