しまくとぅば標準語 問題意識を深める契機に


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 しまくとぅば(琉球諸語)の継承、復興に対する県民の関心や意識が高まっている中で、新たな課題が突き付けられている。

 那覇市文化協会主催のシンポジウム「沖縄自立への道 しまくとぅばの復興と自己決定権」が24日開催されたが、そこで浮き彫りになった論点は、しまくとぅばに「標準語」が必要か否かということだ。
 「しまくとぅば」とあえて使うのは、「ウチナーグチ」では沖縄本島中南部や首里・那覇の言葉に限定され、与那国や八重山、宮古、国頭、奄美の各言語の個性や多様性が損なわれてしまうからだ。
 従って、しまくとぅばに標準語を設けようといった議論はこれまで本格化してこなかった。
 しかし、母親が久米島出身でしまくとぅばに強い関心を持つ佐藤優さん(作家・元外務省主任分析官)はシンポで「沖縄の政治的自立には(しまくとぅばで)公文書を作らないといけない。規範となる琉球語が必要だ」として、しまくとぅばの標準語と正書法を定める重要性を強調した。
 佐藤さんの問題意識を敷衍(ふえん)すれば、例えば「慰霊の日」の知事メッセージや、県内全市町村長らが米軍普天間飛行場の県内移設断念とオスプレイの配備撤回を求めた建白書などの文面を、標準琉球語で書く感じだろうか。
 対外的なアピール度なども考えれば、県民総意の「琉球語」があれば確かに効果的だろう。しかし標準語設定には、シンポ会場から戸惑いや疑問の声が上がったこともしっかり押さえる必要がある。
 しまくとぅばの標準語となると、首里・那覇言葉やウチナーグチが基本となりがちだ。それでいいのか。ウチナーグチ以外の言語地域からは当然、異論が出よう。
 しまくとぅばの個性や多様性を尊重しつつ、標準語を設定できるのか、すべきなのか。佐藤さんは「沖縄への構造的差別に抵抗できるのは、文化の力であり、その中心がしまくとぅばだ」とも力説した。沖縄の自己決定権を確立していく上で、しまくとぅばの在り方や方向性の議論はますます重要になる。
 大切なのは建白書の意義が「オール沖縄」であったように、標準語をめぐる議論が動揺や亀裂を生まないようにすることだ。まずは各地域でしまくぅばの復興を図り手応えを得る中から、次のステージも見えてくるのではないか。