自民県連の「処分」 論理の倒錯、主客転倒だ


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 米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた埋め立てを承認した仲井真弘多知事に対し、抗議の意見書を可決した那覇市議会の議員に、自民党県連が処分を下した。

 公約を事実上破棄した県連が、知事の公約違反に抗議した市議を処分したのだ。誰が、どんな資格で、誰の「罪」を問うというのか。論理が完全に倒錯している。
 主客転倒も甚だしい。県民の信頼を裏切ったのは県連の方であり、処分されるべきは県連の方だ。県議らがそれに異議があり、自らの主張が正しいと言うのなら、堂々と信を問えばいい。県議を辞職し、出直し県議選で県民の審判を仰ぐべきだ。
 那覇市議会の意見書は、知事の埋め立て承認が「公約と全く矛盾する」と批判した。安倍晋三首相の基地負担軽減などの発言に対し知事が「驚くべき立派な内容」と述べた点も、「県民の思いと大きく懸け離れたもので、県民の落胆は計り知れない」と難じた。
 知事の承認直後の琉球新報世論調査では、県民の72・4%が「公約違反」との認識を示した。県外・国外・無条件撤去を73・5%の人が支持している。意見書はまさに民意をくみ取っている。この内容のどこに問題があるというのか。
 県連は、意見書に賛成した県連所属の那覇市議11人と安慶田光男議長を1年間の役職停止処分とした。いずれも既に役職を辞任していたが、処分を受けたことで今後の選挙で党の公認、推薦が得られない可能性もあるという。これでは離党勧告をちらつかせて恫喝(どうかつ)した自民党本部と同じではないか。
 市議らは「地方自治法で定める意見書可決がなぜ県連規約に違反するのか」「無所属の知事に意見したことがなぜ処分の材料になるのか」「同様の意見書に賛成した他の市町村議員は処分していない」と疑問を投げた。至極当然だ。論理的でないのは県連の方であろう。
 意見聴取もせず一方的に処分した点についても市議らは疑問を投げる。今回、県連会長に就任した西銘恒三郎衆院議員が「県外移設を求める人と議論をする必要は無いと思っている」と述べたこととも通底する。議論が仕事の議員が、議論を避けるのはおかしいではないか。
 同時に除名処分された元県議会議長の仲里利信氏は「公約を違えた県連が処分されるのが筋ではないか」と述べた。これこそ県民世論を代弁している。