春の新聞週間 「心の栄養」の使命重く


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日本新聞協会が提唱する「春の新聞週間」がスタートした。4月6日は「新聞をヨム日」でもある。暮らしに役立つニュース・情報の宝庫としての新聞の存在意義を自覚し、県民、読者と共有したい。

 「サブロー 事故に負けない」。3月14日付の本紙は、1面と社会面で糸満市の海人工房・資料館の看板犬サブロー(オス、約1歳)の話題を大きく取り上げた。
 昨年夏に交通事故に遭い、下半身不随になって左後ろ足を切断しながら、奇跡的回復を遂げたサブロー。たくましい生命力をサバニ舟大工やその仲間たちの善意、元看護師の献身的な介護が支えた。
 記事は読者の共感を呼んだ。工房や取材記者には「この話題に励まされた」「サブローは糸満の誇り」といった声が市民から寄せられた。送り手のわたしたちも、新聞が多難な時代を生き抜く「心の栄養」になり得るということと、その使命の重さを再認識した。
 昨年末に特定秘密保護法が国会で可決成立し、国民の「知る権利」と報道の自由の制限が懸念されている。この国は消費税増税や環太平洋連携協定(TPP)、原発政策、中韓両国との歴史認識や領有権をめぐる対立、米軍普天間飛行場返還問題など難題を抱え、歴史の曲がり角に立たされている。
 こうした中、わたしたちは県民と喜怒哀楽を共にし、多様な報道で人々の暮らしや持続可能な環境・経済、平和な社会を支える「知的インフラ」であり続けたい。
 新聞協会が昨年まとめた見解「新聞の公共性と役割」は新聞を民主主義社会の必需品と記す。NIE(教育に新聞を)運動推進を通して「将来の日本を担う青少年の読解力、言語力、考える力を高め、国際競争を勝ち抜ける人材を育てることが必要」と、新聞など活字メディアの重要性も指摘する。
 「新聞で学力を伸ばす」と提案する斎藤孝・明治大教授は、東京新聞のインタビューで学生が新聞を使って「切り抜き、貼り、メモを書き、人に要旨・コメントを話す」というトレーニングをすると、学力が格段にアップすると指摘した。新聞の有効活用で就職活動での差別化が大いに期待できよう。
 わたしたちも「歴史の記録者」「社会を映す鏡」としての役割、新聞の公共性を肝に銘じ、県民・読者の心の潤いと生きる力を支える、役立つ新聞であり続ける。