日仏の武器開発 合意なき政権の「暴走」だ

 政府はフランスと無人潜水機の共同研究を開始する方針を固めた。日本側の武器輸出三原則見直しに伴う禁輸政策撤廃に基づく動きだ。国民的合意もないまま、既成事実を積み重ねようとする安倍政権の姿勢に強い危機感を覚える。

 両政府は水中での警戒監視ができる無人潜水ロボットの燃料電池などの関連技術を想定し、安倍晋三首相とオランド仏大統領の5日の首脳会談で合意する方向で調整している。
 両国の安全保障関係は従来それほど強いものではなかった。今回の共同開発の背景には、日中関係の悪化を踏まえ、対中包囲網の形成に向けて欧州連合(EU)の有力国フランスと関係強化を図りたい日本側の思惑がある。
 中国もフランスとの経済連携の拡大を打ち出すなど接近を図っている。安倍首相としては武器の共同開発でフランスと関係を深め、中国に対抗する考えのようだが、連携の方向が間違っていないか。これでは中国を刺激するだけだ。
 日本政府は先にオーストラリアとも防衛装備品の共同開発協力を加速させることで一致した。潜水艦技術を念頭に置いており、今後、その他の安全保障協力や共同訓練の拡充も図る方針だ。
 安倍政権は4月に武器や関連技術の輸出を基本的に禁じてきた三原則を見直し、新たな輸出ルール「防衛装備移転三原則」を閣議決定したが、多くの国民は武器禁輸政策の撤廃を支持してはいない。
 共同通信社が4月中旬に実施した全国世論調査では、防衛装備移転三原則への賛成は36・2%で、反対が50・4%に上る。閣議決定後も依然国民の過半数が反対している事実を重く受け止めるべきだ。
 安倍政権は憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認を目指している。武器輸出禁止の撤廃と併せて、戦後日本が守り続けてきた平和国家の国是をかなぐり捨てるその姿勢は到底納得できない。
 禁輸政策の大転換に当たり政府は「死の商人にはならない」(小野寺五典防衛相)と説明するが、空証文にすぎない。技術の流出防止を確認するというが、過去の輸出国の事例を見ても、第三国への武器流出に歯止めがかかる保証などないのは明らかだ。
 「武器」を「防衛装備品」と耳当たりの良い言葉に置き換え、なし崩し的に輸出拡大を推し進める動きは断じて容認できない。