憲法世論調査 解釈変更拒否は明白だ


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 安倍晋三首相が目指す集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更について「変更すべきだと思わない」が59・5%を占めた。琉球新報社が憲法記念日を前に実施した県民世論調査の結果だ。「変更すべきだ」は30・8%にとどまった。

 共同通信が4月に実施した全国世論調査でも、憲法解釈変更に「反対」が52・1%、「賛成」が38・0%だった。
 現行の平和憲法を根底から破壊しかねない解釈変更について、県民、国民世論の過半数が反対している現実は極めて重い。
 集団的自衛権とは、自国が攻撃されていなくても同盟国などが攻撃されている時に反撃する権利を指す。日本が海外で米国の戦争に巻き込まれるだけでなく、米艦艇を護衛しただけで日本の国土が攻撃される可能性も指摘される。
 安倍政権が50%超の高い支持率を維持しながら、県民や国民に憲法解釈変更に根強い反対意見があるのは、集団的自衛権が内包する危うさへの理解が進んでいるのだろう。国民のバランス感覚を評価したい。
 県民世論調査では、戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条について「堅持すべきだ」が60・9%を占めた。見直しに賛成する意見でも「戦争放棄の1項は維持、戦力不保持の2項は変えるべきだ」が27・5%で、「変えて軍事力を持つべきだ」はわずか7・0%にとどまった。不戦を誓う県民が9割近くに達していることは特筆すべきだろう。過酷で悲惨な沖縄戦の記憶や、戦後69年近くを経てもなお、過重な基地負担を押し付けられている沖縄の実態と決して無縁ではあるまい。朝鮮半島、ベトナム、イラク、アフガニスタン…。沖縄はある意味で米軍を通して戦争に直結しているからだろう。
 憲法改正については「現状のままでよい」66・1%、「変えた方がよい」27・8%だった。調査手法は異なるが、琉球新報の2005年調査では、改正を求めるが52%、現状のままでよいは41・8%だった。評価が入れ替わった意味は極めて重い。
 この間、基地問題をめぐる民主党政権の迷走や自民党安倍政権の高圧的な姿勢など、沖縄に対する差別的かつ理不尽な対応が顕在化していることも一つの要因だろう。安倍首相は、憲法の基本理念である国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の重みをかみしめ、政権運営の根幹に据えるべきだ。