普天間移設世論 国策の犠牲を強要するな


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 米軍普天間飛行場返還問題で県民の73・6%が今なお、辺野古移設に反対している。琉球新報社が4月下旬に実施した県民世論調査の結果、分かった。

 昨年末に仲井真弘多知事が政府の名護市辺野古沿岸埋め立て申請を承認した直後の世論調査では、県外・国外移設、無条件閉鎖・撤去が計73・5%を占めていたが、今回の調査も同じ傾向を示した。
 日米が正真正銘の民主主義国家だと自認するのなら、民意の支持なき辺野古移設合意を撤回し、直ちに普天間の閉鎖・撤去、県外・国外移設への道を探るべきである。
 2012年5月に琉球新報社などが実施した電話世論調査では、辺野古移設反対は約9割に達していた。それは、09年衆院選で普天間移設は「最低でも県外」と公約した民主党が、政権奪取後の10年5月に辺野古に回帰したことへの県民の反発を反映していた。その後も、辺野古移設反対の世論は7~8割台で高止まりしている。
 ただ県内の政治状況は混沌(こんとん)としている。昨秋以降、普天間「県外移設」を選挙公約に掲げていた自民党の県関係国会議員や県連が日米合意の辺野古移設に転じ、知事も「5年以内の運用停止」などを条件に「県外移設」公約をほごにして辺野古容認に舵(かじ)を切ったからだ。
 しかし辺野古移設を拒む民意の根深さを軽く見てはならない。
 沖縄は沖縄戦で本土防衛の「捨て石」にされ、多くの尊い命を失った。戦後は過酷な軍事植民地政策によって命と人権を脅かされ、復帰後42年の今は在日米軍専用施設の74%を背負わされている。多くの県民はこうした悲劇や人権蹂躙(じゅうりん)、過重負担の強要が沖縄への構造的差別だと理解している。だからこそ次代の負の遺産となりかねない辺野古移設を拒んでいるのだ。
 歴代知事は沖縄が日本とアジアの懸け橋として、この国の発展に非軍事面で貢献できると繰り返し発信してきた。県民が東アジアの中心にあって、人・物・情報が行き交う「平和の島」への転換を追求することは許されないのか。
 繰り返すが、県民の7~8割が辺野古移設を拒絶することの重みをかみしめるときだ。県民にも沖縄の未来を自ら切り開く自治権、自己決定権がある。もう国策の犠牲を沖縄だけに押しつけるのはやめてほしい。日米はこうした疑問に正面から答えるべきだ。