ストーカー対策 社会全体で関与を深めたい


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 ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)の被害が深刻化する中、全国の警察本部が相談に一元的に対応する仕組みを整えた。部署間の垣根を取り払い、組織を挙げて凶悪事件を防ぐ狙いだ。

 昨年1年間に全国の警察が把握したストーカー被害は2万1089件と初めて2万件を超え、2年連続で過去最多となった。沖縄は155件で、前年比67件も増え、またDV被害は656件で98件増加している。
 被害増には警察が対応を強化したことで実態の把握が進んだ側面もあろうが、凶悪事件が後を絶たない現実を直視する必要がある。
 今月2日には大阪市で、大阪府警にストーカー被害を相談していた38歳の女性が刺殺され、殺人の疑いで57歳の男が逮捕された。警察が全国で態勢を整えたばかりの惨劇であり、やり切れない。
 女性は今年3月2日、男からのストーカー被害を警察署に相談した。署は危険性を3段階の真ん中の「B」と判定し、男に警告。男は「もう関わる気はない」と話し、署は女性に電話で確認した上で、危険度が一番下の「C」に変更した。1カ月置きに状況を確認することにしていたが、連絡する予定だった5月2日に事件が起きた。
 府警は「取り得る措置は取っていた」としたが、ストーカーでまたも尊い命が奪われた事実を深刻に受け止めるべきだ。専門家は、男が執ように送っていたメールに殺意をほのめかす内容があった点を挙げ、「加害者心理の把握が肝心だ」と指摘している。
 全国の警察が4月までに導入した新たなストーカー対策では、窓口の生活安全部門に、刑事部門を加えるなどして態勢を強化した。背景には、両部門の連携ミスや情報共有の不備などから殺人事件を防げなかった過去への反省がある。県警も4月から子供・女性安全対策課や専門チームを設置している。
 遅ればせながら警察が取り締まり態勢を強化したことは評価できようが、その上で今回のような悲劇を繰り返さないために何をなすべきかを考えたい。警察任せにせず、多くの関係機関や団体、専門家などが連携し、関与を深めることが必要だ。
 DVも含めて被害者は報復などを恐れたり、自らを責めたりして声を上げにくいといった状況がある。弱い立場にある女性や子供たちが安心して相談できるような環境を社会全体でつくりたい。