混迷ウクライナ 泥沼化回避へ英知傾けよ


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 ウクライナ情勢が混迷の度を深めている。南部オデッサ州では2日、親欧米のウクライナ暫定政権支持派と親ロシア派による大規模な衝突が起き、親ロ派が集まっていた建物で火災が発生して46人が死亡、200人以上が負傷した。

 2月の暫定政権発足後、一度の衝突では最多の犠牲者だ。ウクライナや米ロ、欧州連合(EU)の4者は違法な武装集団の武装解除や暴力の自制でいったんは合意していたが、それは事実上破綻した状況だ。
 東部ドネツク州で今月11日に予定されている独立の是非を問う住民投票をめぐり対立が激化することも懸念され、先が見通せない泥沼化の様相も呈している。
 しかし、これ以上の混乱の拡大はウクライナだけでなく、国際社会にも深刻な影響を及ぼす。4者による事態収拾の動きを再起動し加速できるよう、日本も含め国際社会は英知を傾けるときだ。
 親ロ派に影響力を持つロシアには特に冷静な対応が求められる。クリミア編入に続き、ウクライナ東部・南部へ軍事介入する展開は決してあってはならない。
 ロシアは親ロ派へ自重を促し、暫定政権側との対話機運をこそ醸成すべきだ。暫定政権側も強硬策を続けて状況を悪化させ、ロシアに介入の口実を与えることがないよう賢明に対応する必要がある。
 親ロ派住民の間では暫定政権の背後に民族主義勢力や米国の影響力も感じ取り、不信感が高まっているという。国民の間に相互不信と憎悪の悪循環が生まれては、事態を収拾したとしても対立の火種がくすぶり続け、ウクライナの統一維持の障害となろう。
 国の統一と国民の和解を保つために、親ロ派が求める連邦制導入は有効な手段だが、ロシアに有利に働くだけとの指摘も根強い。
 暫定政権側もいったんは導入に理解を示したが、連邦制導入が東南部の分離独立につながるとの危機感がある。実際、親ロ派内は連邦制下で国内にとどまろうという意見がある一方で、クリミア同様にロシア編入を目指す勢力も強いという。
 今月25日には大統領選も予定されているが、連邦制導入を含めウクライナの将来像をどう示せるかが政権側の大きな課題だ。 
 シリアのように泥沼化して市民の犠牲が増えることだけは何としても避けたい。そのためにも国際社会は最大限の努力をすべきだ。