辺野古前倒し検討 県民愚弄の政治手法だ

 焦りの表れであろうが、あまりにも非常識で卑怯(ひきょう)なやり方だ。

 政府が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、来年4月に予定していた代替施設本体の埋め立てに向けた工事を、今秋に前倒しして実施する方向で検討していることが分かった。
 県知事選前に「早期着工」をアピールし、仲井真弘多知事が求める「普天間飛行場の5年以内の運用停止」に取り組む姿勢を示す狙いのようだ。
 しかし、普天間の辺野古移設問題は今秋の県知事選の最大の争点である。その前に工事着手の既成事実をつくり、争点外しを図る手法は浅ましい。政府は露骨な選挙介入で、沖縄の地方自治を侵害してはならない。
 政府は、県知事選で辺野古移設に反対する候補者が当選した場合にも、着工の既成事実を盾に移設を推進する二段構えのようだ。
 県知事選で示される民意などお構いなしに辺野古移設を強行する政治姿勢は県民を愚弄(ぐろう)し、民主主義を否定するものであり、断じて容認できない。
 琉球新報が4月下旬に実施した県民世論調査では、普天間問題で県民の73・6%が今もなお、辺野古移設に反対している。
 こうした民意を前に、しかも知事選の前に工事に着手できると、政府は本気で思っているのか。沖縄を力で押しつぶせる軍事植民地と見ているのか。
 米国家安全保障会議(NSC)のスタッフなどを務め、沖縄返還交渉に携わった元国防次官補代理のモートン・ハルペリン氏は辺野古移設について「市民に望まれていない中で実行するのは考えられない」と述べ、民意無視の日米両政府の姿勢を批判した。
 沖縄に新たな海兵隊基地を造る必要性についても「新基地で想定している軍事的な機能が、周辺の他の軍事施設では成り立たないということはまずあり得ない」と否定的だ。これこそ米国の良識と言えよう。
 政府は早期着工で「5年以内の運用停止」を印象づけたいのだろうが、米政府は明確に拒絶しており説得力がない。県民の尊厳を踏みにじって辺野古に新基地を造ることは、国家権力の暴走以外の何物でもない。
 繰り返すが、県知事選前の辺野古移設の工事着手は言語道断だ。普天間の閉鎖・撤去、県外・国外移設こそ直ちに着手すべきだ。