ダイビング規制 保全と利用の両立目指そう


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 世界に誇るべき海を後世に残すために一定の規制は必要だ。保全と利用の両立へ英知を集めたい。

 渡嘉敷、座間味両村が慶良間諸島周辺の指定海域で、立ち入り人数を制限する方針を固めた。特定の場所にダイバーが集中し、サンゴ礁を傷付ける被害を防ぐことなどが狙いだ。両村は早ければ6月に議会に関連条例案を提出する。
 2008年に施行されたエコツーリズム推進法に基づく規制策で、実現すれば全国初となる。両村は08年10月にダイビング協会などを交えてエコツーリズム推進協議会を設立。協議会がエコツーリズム推進の全体構想を策定し、議論してきた。
 同推進法は、保護する必要がある「特定自然観光資源」に指定した区域への立ち入りを制限できる権限を市町村に認めている。両村の全体構想ではサンゴ礁の分布域である水深30メートルより浅い海域を特定自然観光資源に指定しており、今後具体的なルールを策定する。
 サンゴ礁と多様な生態系で知られる慶良間諸島と周辺海域は3月、国立公園に指定された。国立公園の新規指定は27年ぶりだ。青く透き通ったその輝きから「ケラマブルー」と称される貴重な海を、未来に引き継いでいくことの大切さをあらためてかみしめたい。
 慶良間周辺海域ではサンゴの天敵オニヒトデの被害や、海水温の上昇でサンゴが死滅する「白化現象」がたびたび発生。一方で人気の潜水スポットにダイバーが集中したり、マナーの悪い業者らの行為でサンゴが破壊されたりする事例も報告されてきた。国立公園化で観光客の増加が予想される中、環境保全の議論は待ったなしだ。
 新たな規制案では、オニヒトデ駆除など環境保全に取り組んでいると認定した事業者の立ち入りは制限しないが、悪質な違反者への罰則、立ち入り人数制限、監視体制などについて検討している。ルールの明確化が必要だろう。
 地元のダイビング関係者からは「環境を守る機運が高まる」と評価する声が上がっている。一方で本島の小規模ダイビング店などからは、経営面への影響を懸念する声もある。丁寧な説明が求められる。
 条例制定の動きに関しては両村とも「環境保全が目的であり、観光客の訪問を制限するものではない」と説明する。世界屈指のサンゴ礁保全と地域の活性化の両立を目指し、合意形成を急ぐべきだ。