防衛局申請手続き 民意無視の暴走は破滅招く


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 米軍普天間飛行場移設問題をめぐる安倍政権の暴走は、とどまるところを知らない。徹底した地元無視により、この国の民主主義・地方自治が危機に瀕(ひん)している。

 政府が普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、辺野古漁港の使用許可などを名護市に求めた申請手続きで、沖縄防衛局が任意で設定した12日の回答期限が過ぎた。
 名護市は、6項目の申請手続きのうち5項目の書類に不備があるとして再提出を求めたが、防衛局は「法令に従い適正に提出した。取り下げはしない」と再提出を拒んでいた。
 防衛局は、今後の対応について「検討中」とするが、「回答がない場合は協議が調わなかったものとして処理する」とし、協議を打ち切って移設作業を進める方針を示していた。
 政府は名護市への是正要求などの法的措置も検討するとされる。防衛局は期限設定について法的根拠はないと認めながら、名護市を「業務怠慢」として法的手段に訴えることは支離滅裂であり、主客転倒以外の何物でもない。
 移設反対の民意をないがしろにするだけに飽き足らず、法令を無視して国権を乱用することがまかり通るのならば、独裁国家と何も変わらない。稲嶺進名護市長が「法治国家としてあるまじき行為」と批判するのは、至極当然だ。
 今回の申請に限らず、辺野古移設に向けた一連の手続きをめぐる政府の手法は、嫌がらせにも似て極めて姑息(こそく)だ。
 沖縄防衛局による4月11日の申請書の提出は、金曜日の業務終了間際の午後5時前で、名護市との事前調整は一切なかった。
 思い起こせば、2012年12月末に環境影響評価の補正書を県庁に未明に搬入したほか、13年3月に埋め立て承認申請書を県に提出した際も、不意打ちで書類を運び込んでいる。国の「威信」とは程遠い姿に唖然(あぜん)とするほかない。
 安倍晋三首相は普天間移設について「地元に丁寧に説明し、理解を求めながら進める」と繰り返し述べてきたが、実際の手法は言葉とは完全に逆だ。粗雑であり、民意無視も甚だしい。
 今年1月の稲嶺市長再選後、首相はじめ、外務、防衛の担当閣僚が稲嶺市長を1度も訪ねていないことが、丁寧な説明も理解を求める考えなども、さらさらないことを物語る。民意を顧みない暴走はいずれ破滅を招くと知るべきだ。