離島奪還訓練 危機をあおる印象操作だ

 東シナ海の緊張と混迷が深まり、日中双方に疑心暗鬼ばかりが募る事態を強く危惧する。

 防衛省は、鹿児島県・奄美群島の無人島、江仁屋離島(えにやばなれじま)で、陸海空の3自衛隊が連携した離島奪還訓練を27日まで実施している。尖閣諸島をめぐって日中関係が悪化する中、海洋進出を強める中国をけん制する狙いがあるのは明らかだ。
 時を同じく東シナ海の北方では、中国海軍とロシア海軍が合同軍事演習を26日まで実施している。こちらも日本と米国をけん制する意図がある。
 日中双方の軍事的な威圧行為は、いたずらに緊張関係を高め、対話による問題解決を遠ざけるだけだ。無用な危機をあおる軍事訓練を日中両国は厳に慎むべきだ。
 3自衛隊による離島奪還訓練は国内では初めてだ。安倍政権は離島防衛強化を掲げており、南西諸島への陸上自衛隊の警備部隊配備に向けた地ならしの意味合いもあろう。中国に対する住民の警戒感をあおる狙いも透けて見える。
 実際、中国脅威論が喧伝(けんでん)されることで県民感情も悪化している。県が昨秋実施した県民意識調査で、中国に「良くない」印象を持っている人が89・4%に上った。しかしながら対立がエスカレートすれば、真っ先に狙われ被害を受けるのは軍事基地が集中する沖縄であることを決して忘れてはなるまい。
 離島奪還とは、敵対勢力に制圧された島を、上陸して武力で奪い返すことを指す。尖閣諸島が想定されるが、先島など有人島も対象とされる。住民がいる島で奪還作戦が実行に移され、戦闘状態に陥れば、どのような状況になるかは沖縄戦が既に実証済みだ。
 そもそも離島奪還とは、領土・領海を防衛する国家主義的な目線でしかなく、住民の安全は二の次、三の次であり、場合によっては島の全滅をも想定するものだ。外交の失敗を前提とした島民全滅作戦と置き換えてもいい。
 安倍晋三首相は「国民の生命と財産を守る」と繰り返すが、その中に沖縄県民が含まれているのか甚だ疑問だ。
 離島奪還作戦は机上の空論でしかなく、訓練の実行はまやかしだ。国民の危機意識に訴え、「戦争ができる国」への政策転換を正当化するための印象操作でしかない。安倍政権は、外交努力による中国との関係改善に注力すべきだ。戦わずして平和を維持する最高の外交こそ追求すべきだ。



琉球新報