改正生活保護法 貧困救う原点忘れるな


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 生活保護の不正受給対策を強化した改正生活保護法が施行された。厳罰化による不正受給抑制と受給者の削減が法改正の主な目的だが、貧困の救済という生活保護制度の原点が全うできなくなる事態は避けねばならない。

 生活保護制度の抜本的見直しは、人気お笑い芸人の母親が生活保護を受給していた問題がきっかけとなった。受給者に対する冷ややかな目線が注がれるいびつな状況が続いている。
 生活保護受給者は3月時点で217万人と過去最多を記録した。生活保護費は3兆円を大きく超えるものの、2012年度の不正受給額は全体の約0・5%にすぎず、ごく一部にとどまっている。
 世界的にも日本は人口比較で受給者が少なく、専門家からは、困窮にあえぐ人の7割以上が受給できていないとの指摘もある。
 生活保護は憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に根差す。医療保険や公的年金などの社会保障制度からこぼれ落ちた人を救う「最後のセーフティーネット」と称される。
 こうした中、改正法が受給者削減を狙っていることには強い違和感がある。生活保護を必要とする人が受給できず、さらなる貧困にあえぐことがあってはならない。
 法改正により、不正受給の罰金上限が「100万円以上」に引き上げられ、返還金にペナルティーの上乗せが可能となる。厳罰化と並行し、保護申請の窓口となる福祉事務所の調査権限が強化された。
 昨年末の制度改正で、いったんは収入書類の提出義務付けなど、申請手続きが厳格化された。
 受給者の支援団体が「必要な人が申請をためらう」と反発し、4月には口頭での申し込みも受け付ける再修正がなされ、受給者数を抑え込む「水際作戦」は乱用できなくなった。それでも、必要な受給者が保護を受けられなくなるという懸念がくすぶっている。
 一方、受給中に働いて得た収入の一部を積み立て、保護から抜けた後に支給する「就労自立給付金制度」が創設される。自立支援策が効果を上げることは望ましい。
 だが、失業や病気、障がい、親の介護など、複数の要因が重なって貧困にあえぐ人の自立を支えるには、的確な自立支援策を見定める能力を持った職員育成なども喫緊の課題だ。行政や関連団体の取り組みを一層強めねばならない。