海自強襲揚陸艦 離島防衛に不要な計画だ


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 自衛隊が上陸用装備を搭載できる「強襲揚陸艦」のような艦艇の導入を検討するという。南西諸島防衛を理由にしているが、本当に必要性があるのか。甚だ疑問だ。

 小野寺五典防衛相は訪問先の米国で、離島奪還作戦で活用する新型艦艇の海上自衛隊への導入を本格検討する意向を表明した。尖閣諸島の領有権を主張する中国に対抗する狙いがあるのは明らかだ。
 小野寺氏が視察した米海軍の強襲揚陸艦は広い甲板を持ち、多数のヘリコプターや水陸両用車両などを搭載できるタイプだった。視察後は「島しょ防衛のため、必要な部隊を速やかに展開できる多機能の輸送艦という意味合いで考えたい」「強襲というイメージではない。名称よりも機能に着目して検討する」と語っているが、違和感を禁じ得ない。
 揚陸艦とは港がない場所などに沖合から上陸する作戦に投入する艦艇だ。このうち、ヘリや上陸用舟艇などを搭載して運用する能力を備えたものを強襲揚陸艦と呼ぶ。敵地に乗り込む「殴り込み部隊」である在沖米海兵隊の戦闘部隊の活動に不可欠な存在であることはよく知られている。
 大臣の発言からは強襲揚陸艦への印象をソフトに薄めたいとの思惑がうかがえるが、文字通り本来は攻撃用部隊が使う艦艇であることは指摘するまでもない。
 防衛省は、自衛隊に海兵隊的機能を付与することを念頭に、昨年末に決定した中期防衛力整備計画などで、水陸両用作戦時の大規模輸送や航空運用の能力を備える艦艇の導入検討を明記していた。
 小野寺氏の表明もその延長線上にある。新型艦艇には2015年度の自衛隊導入を目指す輸送機オスプレイや、18年度までに52両を調達する水陸両用車の搭載も想定する。だがこうした計画が中国側の反発を招くことは必至で、かえって地域の緊張を高めかねない。
 安倍政権は集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更の閣議決定を強行し、自衛隊の海外での武力行使に道を開いた。自衛隊が強襲揚陸艦を導入した場合、米国の要請により、その派遣範囲が際限なく広がる可能性もある。他国への侵略に加担する恐れは否定できない。
 自衛隊は専守防衛の理念に今こそ立ち返るべきだ。強襲揚陸艦導入は本来任務から大きく逸脱するものであり、むしろ緊張を増幅しかねない。計画は再考すべきだ。