ジュゴン食跡 アセスの茶番を証明した


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 国の建設事業に対する、国による環境影響評価(アセスメント)など、事業是認の結論ありきの茶番にすぎない。それを証明する事実がまた一つ明らかになった。

 日本自然保護協会は、米軍普天間飛行場代替施設建設予定地でわずか2カ月の間にジュゴンの食跡を110本以上発見したと発表した。サンゴ礫(れき)が付着した鍾乳石も日本で初めて発見、新種や日本初記録の生物種も次々に発見した。いずれもアセスに記載がなかった事実だ。
 このアセスは、情報の隠蔽(いんぺい)や後出しも既に多数明らかになっている。これほどずさんな調査に基づき事業を是とするならば、もはやアセスの名に値しない。国は直ちに建設計画を撤回すべきだ。
 ジュゴンの食跡は、従来は数カ月に1度、それも数本見つかる程度だった。今回は110本、それも市民団体による限られた規模の調査である。しかも発見地点はまさに埋め立て予定地内が大半だ。
 だがアセスは「(ジュゴンは)嘉陽地区の藻場を主に利用していると考えられ、辺野古地区利用の可能性は小さい」と記す。嘉陽の藻場は8ヘクタールだが、辺野古は173ヘクタールだ。うち埋め立てで消失する面積は78ヘクタールもある。それなのにアセスはジュゴン維持への影響はないと結論付ける。食跡の数に照らしても、藻場面積に照らしても、およそ説得力を欠く。建設ありきの非科学的結論としか思えない。
 長島の洞窟で見つかったサンゴ礫付着の鍾乳石も貴重な発見だ。浦田健作・日本洞窟学会副会長は数万~十数万年の海面変動、自然史を解き明かす可能性を秘めるとして詳しい調査を求めている。
 周辺の生物資源も豊富だ。十脚甲殻類はわずか10日の調査で36種の未記載種が見つかった。シャコ類も3種の未記載種があった。貝類は815種超、海藻も182種見つかり、うち4種が新種である。
 本島周辺のジュゴンはわずか3頭だ。そのジュゴンの食跡が多数、新種の生物種も数多く見つかる海を、十分に調査せずに破壊していいのか。
 仲井真弘多知事は2年前に「アセスが示した措置では環境保全は不可能」と公表した。アセスの時点で不可能と判断したものが、公有水面埋め立ての手続きでは正反対の結論を導くのが可能なら、日本の環境法制そのものに問題がある。日本自然保護協会はそう指摘した。全く同感である。