滋賀県知事選 政権に民意重視迫る警告だ


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 地方の選挙結果が国政を直撃することがある。

 滋賀県知事選挙は、無所属で前民主党衆院議員の三日月大造氏が自民、公明両党が推薦する小鑓隆史氏を破り、初当選を果たした。
 安倍政権の発足後、与野党が対立する構図の国政・知事選で与党が初めて敗北を喫した。
 数の力を頼りにした国民不在の政権運営に対する有権者の強い異義申し立てであり、警告である。安倍首相と政権は厳粛に受け止め、民意を軽んじる政治姿勢を改めるべきだ。
 三日月氏は「草の根自治」を掲げて2期務めた嘉田由紀子知事の後継者の立場を前面に打ち出した。原発再稼働に突き進む安倍政権に対抗して「卒原発」を掲げつつ、集団的自衛権の行使容認に踏み切ったことへの批判を強める戦術が奏功し、得票を押し上げた。
 選挙戦の序盤は、元通産官僚で、アベノミクスの立案にも関与した小鑓氏が優勢だった。安倍首相が、集団的自衛権の行使容認を閣議決定による解釈改憲で押し切って以降、三日月氏が盛り返した。
 立憲主義を掘り崩す強引な政治手法は厳しい批判を浴び、報道機関の世論調査で、安倍政権の支持率は軒並み低下している。
 福島県の中間貯蔵施設建設をめぐる石原伸晃環境相の「最後は金目」発言は、原発が多く立地する福井を隣県とする滋賀の有権者にとっても不誠実な発言に映ったはずだ。東京都議会や衆議院での自民党議員による女性蔑視やじ問題にも厳しい目が注がれ、選挙情勢に影響したことは間違いない。
 いずれも、有権者からすれば、自民党1強の政治状況が招いた政権のおごりに映っただろう。
 当面は国政選挙がなく、安倍政権と自民党は10月の福島、11月の沖縄県知事選とともに最重要選挙として臨んでいただけに、政権運営への打撃は小さくない。
 滋賀県知事選を受け、安倍首相は集団的自衛権の行使容認について「国民の理解が十分でない。丁寧に説明する」と述べたが、反省になっていない。取るべき対応は民意を重んじた閣議決定の撤回ではないのか。
 安倍政権は、米軍普天間飛行場の代替基地建設問題で、沖縄県民の圧倒的多数が反対する名護市辺野古埋め立てを強行しようとしている。滋賀県知事選の重い結果を踏まえ、安倍首相は、民意を重視する政治にかじを切るべきだ。