再編交付金拡大 県外移設に真剣に取り組め


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 政府は在日米軍再編で基地負担が増える都道府県を対象に、交付金を支給する新制度の創設を検討している。政府はこの創設を機に、普天間飛行場の代替施設を辺野古ではなく、県外に移転することを真剣に模索すべきだ。

 仲井真弘多知事が普天間の5年内運用停止を求めていることに関連し、小野寺五典防衛相は「5年以内に(移設先の)辺野古の工事が終わらない場合、暫定的な利用を視野に入れたい」と述べ、佐賀空港に普天間の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを暫定配備する意向を示した。事実上、普天間の機能を佐賀空港が担えることを意味する。つまり県外移設は可能だったということだ。
 民主党政権時に森本敏防衛相は普天間の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適」と話した。沖縄ではいくら反対しても押し切って基地移設を進め、県外では反発を回避して基地移設をしないという二重基準の政策を取るのが得策だということを意味する。
 22日に佐賀市長に要請した武田良太防衛副大臣は、辺野古の基地完成までの暫定使用だと断った上で「辺野古への移設は揺るぎない。佐賀への移転はあり得ない」と断言した。日本の国土面積のわずか0・6%に在日米軍専用施設の74%が集中している沖縄県に対しては、なぜ「沖縄への県内移設はあり得ない」と断言しないのか。差別以外の何物でもない。
 戦後の当初からこれだけの基地が沖縄にあったわけではない。1950年代に日本で反基地運動が激化し、海兵隊は出て行かざるを得ない状況に追い込まれた。そこで米統治下の沖縄に岐阜県や山梨県に駐留していた第3海兵師団が移駐した。普天間基地に駐留している第1海兵航空団も76年に山口県岩国から沖縄に移った部隊だ。
 沖縄の「地政学的優位性」は幻想だと分かる。森本防衛相が言う通り「政治的」に沖縄に押し込められてきただけだ。そもそも在沖海兵隊の抑止力も神話にすぎない。海兵隊の駐留そのものが不要である。
 われわれは海兵隊は日本に不要だと説いてきた。政府がどうしても海兵隊が日本に必要だというのなら、沖縄でなく県外に置くべきだ。3500億円以上の辺野古移設工事の費用を美しい海の環境破壊に使うのでなく、県外移設のための再編交付金に充当すべきだ。