期限切れ鶏肉使用 食の安全に全力尽くせ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 食の安全を揺るがす事態がまたしても起きた。震源地は今回も中国だった。消費者の健康を預かる食品会社、監督すべき政府の責任は重大だ。国を挙げて食の安全確保に全力を尽くすべきだ。

 上海の食品会社「上海福喜食品」が使用期限切れの鶏肉を販売していたことが、元社員の内部告発に基づいた地元テレビ局の取材で発覚した。同社から鶏肉を輸入していた日本マクドナルドとファミリーマートは人気商品の販売を中止した。現時点で健康被害の報告はないという。
 この食品会社の従業員はテレビ局の取材に対し「期限切れを食べても死ぬことはない」と話した。上海の食品監督当局は「組織的な違法生産の疑いがある」との見方を示している。利潤追求に執心するあまり、食品会社が当然守るべきモラルが全く失われている。消費者の健康を度外視した食品会社の不正行為を許してはならない。
 中国はこれまでも食の安全を脅かす事態を繰り返してきた。2008年1月にはギョーザに殺虫剤が混入する中毒事件が起きた。同年10月には、高濃度の殺虫剤が混入した中国製冷凍インゲンが日本国内で出回り、食べた人が舌のしびれや嘔吐(おうと)などの症状を訴えた。
 これらの事態は、食の信頼性を大きく失墜させた。中国から多くの食品や農産物を輸入している日本の消費者を不安に陥れ「中国の食品は信用できない」という意識を根付かせてしまった。
 食をめぐる不正行為が起こるたびに、中国政府は安全確保に向け、食品会社の監視態勢の強化を内外に宣言した。だが、今回の期限切れ鶏肉使用問題は、中国の食品会社の安全意識が依然として希薄であり、中国政府の監視態勢も不十分であることを裏付けた。
 経済成長に伴い、中国の消費者も食への安全意識が高まっている。食の安全を軽んじる食品会社と、それを見逃した中国政府に対する不信感は一層高まるだろう。安全・安心の追求を最優先とする食品産業の確立と、不正行為を摘発する政府の監視態勢の立て直しを強く求めたい。
 日本側2社のダメージも大きいはずだが、被害者の立場にとどまらない。食品を扱う以上、安全な製品を提供する責任は重いからだ。中国側の生産現場をきちんと把握すべきだった。この上海の会社に限らず、全ての製造元の管理態勢を徹底検証すべきだ。