待機児童 実態把握し抜本的解決を


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 厚生労働省は、認可保育所への入所を希望しても入れない待機児童の定義を見直す方針を固めた。実態をきちんと把握し、十分な対策につなげてもらいたい。

 待機児童数は国が毎年2回発表しており、2013年4月1日時点で全国で2万2741人だ。保育所の卒園児と入園児が入れ替わる4月が最も少なく、それ以降に出産や育児休業期間明けの保護者が出ることから、年度途中に増える傾向がある。
 だがその数字は実態を反映していないとの指摘がある。公表する自治体によって待機児童の定義が曖昧なためで、潜在的な待機児童は数十万人と推定されている。
 自治体間でまちまちだった定義を国が見直し、全体像の把握に乗り出すのは正しい方向だ。問題解決に向けた第一歩となろう。
 現状は親が育児休業を取得している場合のほか、育休中に認可保育所に預けられず、やむを得ず育休を延長した場合も待機児童に含めていない自治体もある。
 こうした判断は疑問だ。自治体の判断ではなく、子どもの入所を親が希望するかどうかを算入の基準とすべきではないか。国の見解を理由に、幼稚園の預かり保育や小規模保育など、認可保育所以外の自治体助成サービスを断った場合も待機児童に数えない自治体もある。こうした点も含めて定義をはっきりさせるべきだろう。
 厚労省は来年4月から始まる子育て支援新制度に合わせて定義を見直す。待機児童の対象施設に認可保育所のほか、認定こども園、小規模保育などを加え、求職中や育休延長の場合も待機児童に含める方針だ。
 待機児童数が大幅に増えることが予想されるが、自治体からは不安視する声もある。このため厚労省は複数の数字を公表する方向でも調整するというが、かえって混乱を招きかねない。数字を取り繕うだけの公表なら意味はなかろう。
 沖縄は13年4月1日時点の待機児童数が2216人と全国で2番目に多い。全国一の出生率を誇る半面、保育ニーズの増加に施設整備などが追い付かない状況が続いている。
 認可保育所増設と併せて、保育士不足の解消を図る人材育成などの取り組みを推し進める必要がある。待機児童の定義見直しを機会に、仕事と育児の両立を望む子育て世代を支援するための施策の拡充に向け、知恵を集めたい。