エボラ出血熱 国際社会の支援で制圧を


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 ギニアなど西アフリカ4カ国でエボラ出血熱が猛威を振るっている。世界保健機関(WHO)によると、感染が確認または疑われる死者は932人に上った。WHOは8日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると発表した。このままでは世界的な流行という極めて深刻な事態を招く。感染拡大を何としても食い止めなければならない。

 致死率は最大90%と極めて高く、有効な治療法が見つかっていない。ワクチンはまだ開発段階だ。感染4カ国にとっては、まさに国家的な脅威だ。ただ、空気感染はないことから、正しい知識に基づく予防法を周知することで流行を抑えることは十分可能なはずだ。
 患者を隔離治療するのは当然だ。公衆衛生向上の施策も求められよう。中でも、この感染症に関する徹底した啓発活動が重要となる。エボラ出血熱は感染した人の血液や分泌物、臓器などに濃厚に接触することによって感染するとされている。一般住民が不用意に患者や遺体に近づかなければ感染の可能性は低いといえる。
 今回の感染は昨年12月にギニアで始まり隣国に広がった。7月上旬には死者は500人を超えた。早期に基本的な知識や予防法を徹底できれば、今回の事態を防ぐことができたのではないか。
 残念なのは感染地域の流言が医療活動を難しくしていることだ。リベリアの首都モンロビアでは隔離措置から免れるために遺体を路上に放置する住民がいるという。エボラ出血熱をデマだと信じる住民の反発によって閉鎖に追い込まれる病院も出ている。いずれも病気に対する知識のなさが背景にある。感染者や死者を増大させる行為だと言わざるを得ない。
 現地の医療体制だけでは限界がある。国際社会が支援に乗り出す段階だ。オバマ米大統領は6日の米アフリカ首脳会議後の会見で、国際社会と協力して現地の医療体制を整備する考えを表明した。WHOも拡大阻止には国際社会の協力は不可欠だと指摘した。治療や公衆衛生に従事する医師らの派遣が急がれる。
 日本も国内への感染を防ぐため、水際の対策を怠ってはならない。空港での検疫の強化が必要だ。WHOは渡航や貿易の全面的規制は求めていないが、不必要な渡航は避けたい。感染国の支援と同時に、自衛策にも取り組みたい。