<社説>GDP6.8%減 生活者軽視の誤り示した


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 安倍政権の経済財政政策には一つの特徴がある。煎じ詰めると富裕層・大企業優遇、低所得層・生活者軽視で、この両者が表裏一体をなしているのだ。

 その路線の誤りを示す結果が表れた。国内総生産(GDP)の実質成長率が4~6月期に年率換算で6・8%の大幅マイナスになった。その原因を突き詰めると、大企業優遇、生活者軽視路線に行き当たる。この路線の危険性はもはや明らかで、正反対に切り替えるべきであり、少なくとも再増税は危険だと知るべきだ。
 政府は、増税前の駆け込み需要を反映した1~3月期のプラスと今回の結果を一体として見るべきだと力説し、今後は回復軌道へ戻ると見ている。だが中身を子細に見ると、楽観的に過ぎる。
 最大の問題は4~6月の個人消費が前期比5・0%、年率換算で19%ほどの大幅減になっている点だ。比較可能な1994年以降では最悪だ。前回の消費増税(97年)時は前期比3・5%減だった。それ以降デフレの泥沼にはまり込んだことを思えば、それより大幅である点を軽視すべきではない。
 しかも今回は輸出も設備投資もマイナスになっている。前回増税時はこれらはプラスだった。
 安倍政権の経済政策は端的に言うと「トリクルダウン」理論に基づく。滴が上の杯に入り、上が満ちると下の杯に落ちるように、まず大企業が潤って中小零細企業にも波及し、やがて家計にも恩恵が至るという理屈だ。だが設備投資もマイナスである現実を見れば、この理論は破綻しかけている。
 改善した雇用も非正規が中心で、賃金が物価上昇に追い付いていない。政権は成長戦略で法人税減税を打ち出したが、企業の内部留保を増やすだけではないか。
 輸出が減少したのは、アジア向けが改善しないからだ。中韓両国との信頼関係を大きく損ねた安倍政権の体質の反映ともいえる。
 消費税は低所得層には負担が重く、貯蓄が多い富裕層には有利な制度だ。累進課税の緩和で富裕層は所得税の負担も軽くなった。法人税も軽減一方だ。過去25年、日本はそうした逆進性が進み、格差が拡大した。
 問題は、本来、消費意欲のある若年層が消費できない点だ。その方向性を逆回転させないと真の消費喚起にはならない。生活者重視に切り替えるべきなのだ。