<社説>ナスミバエ増加 病害虫対策を徹底しよう


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 シマトウガラシなどナス科植物に寄生するナスミバエが沖縄本島中部などで増加傾向にある。数々の病害虫防除に取り組んできた知見を生かし、対策を強化したい。

 ナスミバエは2010年12月に本島で発生が初めて確認された。以降、発生は縮小傾向だったが、13年度から増加し、本年度は7月末時点で前年度の倍近い21市町村で寄生果実が発見された。気候の影響もあるというが、被害の拡大が心配される。
 このため県農林水産部は生のシマトウガラシを県外や県内の未発生地域に持ち出さないよう注意を呼び掛けた。周知を徹底したい。
 ナスミバエは東南アジアや台湾、ハワイなどで発生する。ピーマン、ナス、トマトなどに寄生し、果実内でふ化した幼虫が食害をもたらす。県や農林水産省がまん延防止を図っているが、かつて県内果樹に大被害を与えたミカンコミバエなどと異なり、急激にまん延する恐れは小さいようだ。
 被害は、農薬を使わずに露地栽培している小規模農地や家庭菜園のシマトウガラシが中心で、農薬散布が行き届いた畑やハウス栽培のトマトやピーマンへの被害はほとんどないという。県は今回、移動自粛の措置にとどめているが、雑草にも寄生するというから、十分な注意喚起が求められる。
 ナスミバエは国内では1984年に与那国島で初めて発見された。その与那国では2007年から進められた不妊虫放飼の防除で11年に根絶が確認され、トマトやピーマンなどの島外への出荷の自主規制が解除されている。
 沖縄にはウリミバエなどの特殊病害虫を根絶させた世界に誇る技術と経験がある。昨年は事業開始から20年をかけてアリモドキゾウムシの久米島での根絶が発表された。ナスミバエも仮に被害が深刻化するような事態があれば、根絶も含めて対策が検討されよう。
 亜熱帯の沖縄にとって病害虫との闘いは避けられないが、ウリミバエ根絶後、ゴーヤーやマンゴーの生産が飛躍的に増大したように、その成果は多大な経済効果をもたらす。
 那覇空港の国際貨物中継を利用し、県産ゴーヤーやトマトなどを香港などに輸出する取り組みも進んでいる。安全で質の高い農産物を求めるアジアのニーズを捉えようという動きに、病害虫の被害で水を差してはならない。しっかり取り組みたい。