<社説>岩礁破砕許可 知事選まで工事止めよ


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 県水産課は沖縄防衛局が提出した米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う本体工事の岩礁破砕申請を許可した。これで防衛局は移設で必要な県への許可手続きを全て取得した。海底ボーリング調査だけでなく、埋め立てや護岸構築など、本格的な新基地建設の着手に県がお墨付きを与えたことになる。政府と県が一体となって移設工事を加速させ、11月の知事選よりも前に、移設を後戻りさせないため既成事実を重ねているとしか思えない。県知事選の結果にかかわらず移設を進めるとの政府の方針を県が丸ごと追認し、県民に無力感を与えることに加担しているのは許し難い。

 県水産課は「総合的に検討した結果、許可することが適当だ」と述べている。あくまで事務的に許可を出しているかのようだが、県と政府側は回答時期をめぐって調整をしている。県は当初、8月上旬にも許可の回答を出す方向で審査していたが、8月7日に知事の仲井真弘多氏が次期知事選への出馬を表明することになり、回答時期をずらしたようだ。一方で早期に作業を進めたい政府の意向を受け、県は8月下旬までに回答する方向で作業を進めてきた。極めて政治的な動きではないか。
 仲井真知事は埋め立て申請を承認したことについて、当初は法律にのっとった事務手続きとの考えを示していた。だが最近になって発言は変遷した。今月25日には「早く埋め立てて世界一危険といわれている普天間飛行場を移すことだ」と述べ、27日には「海を埋め立て、普天間の半分のサイズにして移す」と言い出している。28日には「名護の皆さんには苦労をかける」とまで言った。
 県外移設を掲げて当選したはずの知事が辺野古移設を推進する立場に変節している。4年前の国外・県外移設を求める県民大会で沖縄の基地集中を「明らかに不公平、差別に近い印象を持つ」と主張していた姿は影も形もない。
 琉球新報と沖縄テレビ放送が今月実施した県内世論調査では「移設作業を中止すべきだ」との回答が80・2%に上った。知事の移設推進の立場は沖縄の民意と大きく乖離(かいり)している。
 県政が政府のお先棒を担いで工事を進める許可を与えることに、民主的な正当性はない。県は許可を取り消し、県知事選まで全ての作業を止めさせるべきだ。