<社説>シリア空爆 国連が解決の道筋示せ


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 イスラム過激派「イスラム国」との戦いは新たな局面を迎えた。

 米軍は内戦が続くシリア領内への空爆を実施した。8月にイラク北部で開始した空爆に続く実力行使だ。
 繰り返し指摘したい点は、軍事行動が真の問題解決になるのか、甚だ疑問ということだ。10年以上続いたイラク戦争同様、オバマ政権は底の見えない深みに足を踏み込んだのではないだろうか。
 外交交渉や、資金と武器の流入を食い止めるための経済制裁など、非軍事的手段による解決を徹底的に模索すべきだ。
 「イスラム国」は8月から9月にかけて米国人ジャーナリスト2人を惨殺し、その映像を公開した。テロは決して許されるものではない。罪もない無抵抗の人々を惨殺する「イスラム国」のやり方は、断じて許されない。
 だが、力によるテロの抑え込みが真の解決にならないことは、イラクの現状を見れば明らかだ。米国は1カ月以上、イラク領内で空爆を続けたが、過激派に決定的な打撃を与えていない。
 オバマ政権が戦線を拡大する意図は、「イスラム国」壊滅を目指す米国の決意の強さを国際社会に印象づけようとする演出効果を狙ったものとみられる。
 しかし、正当な手続きを踏んで空爆に踏み切ったのか疑問だ。国連憲章上、安全保障理事会の決議を伴わない武力行使は、個別的あるいは集団的自衛権の行使を除いて違法とされる。「イスラム国」が米国にとって自衛権行使が必要なほど差し迫った脅威かどうかを具体的に示す必要がある。イスラム国の脅威は誇張され過ぎているとの議論が存在するからだ。
 さらに攻撃範囲をシリアに拡大しても、最終目標に掲げる「壊滅」は見通せていない。空爆だけで組織を追い詰めるのは困難視されているからだ。
 シリア北部で日本人が拘束されたとみられ、安否がはっきりしない中での軍事作戦だ。空爆によって民間人が巻き添えになる懸念は消えない。そうなれば、米国に対する憎悪の連鎖を招くだけではないか。
 24日から各国の首脳らを集めた国連総会の一般討論演説が始まる。大国の軍事力に頼るのではなく、世界が結束して「イスラム国」に残虐行為をやめさせ、問題を解決する場となることを望む。