<社説> テロ資産凍結法案 国民的理解を得られるか

 政府は国内でテロ行為に関与する恐れのある人物らを対象に、資産を凍結する新法案を臨時国会に提出する方向で調整に入った。

 国際テロ組織「アルカイダ」を資金力で上回るとされる過激派組織「イスラム国」の台頭など、世界はいまだテロの脅威にさらされている。
 テロの根絶に国際社会が一致協力して取り組むことは当然である。日本も2020年東京五輪・パラリンピックに向け、国内のテロ対策を充実・強化する必要に迫られている。
 だが「テロとの戦い」を錦の御旗にすれば、何をやってもいいということにはならない。
 新法案は、国内の過激な活動家らが国連安全保障理事会決議に基づいてテロリストに指定された場合に適用対象とすることを想定している。指定された団体・個人への送金は許可制とすることで実質的に資産を凍結する。
 形式的には安保理決議による指定を想定するが、実質的には日本の捜査当局などが指定に向けた資料を作成することが予想される。
 「テロ行為に関与する恐れ」などの構成要件は曖昧であり、捜査当局によっていかようにも解釈できる余地がある。政府などの意に沿わない市民活動や組合活動などにも拡大解釈される恐れがある。
 厳格さを欠いた法案が果たして国民的な理解を得られるだろうか。
 国連で00年11月に採択された「国際組織犯罪防止条約」に日本は同年12月に署名した。条約加入にはテロ資金を断ち切る法制に加え、共謀罪の新設が前提となる。日本はいずれも不備があると指摘され、署名から14年近くたつが条約加入には至っていない。
 条約加入を実現したい政府はテロ資産凍結法案に続き、今回は見送った共謀罪の新設を今後目指すことは確実である。
 共謀罪を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は3回廃案になっている。その背景には殺人などの重要犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象となることへの国民の根強い反発がある。
 共謀罪が広範に適用されれば、国家による市民監視につながる恐れがある。犯罪が実行に移されて処罰するとの刑事法体系の原則からも逸脱する。
 テロ資産凍結法案と共謀罪は罪なき市民が巻き込まれる危険性をはらんでいる。国際社会の要請とはいえ、慎重にならざるを得ない。