<社説>新聞週間 「知る権利」守る使命胸に


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 きょうから「新聞週間」が始まった。今年入選した標語には知る権利の大切さを訴える読者の思いが寄せられた。「事実が伝われば 変えられる未来がある」「伝えたいと 知りたいを つなぐ新聞」「新聞と 読者が守る 知る権利」とあり、読者が求めている事実を伝える重要性をかみしめたい。同時に新聞に課せられた使命と責任をあらためて確認したい。

 こうした中、政府は国民の知る権利と報道の自由に背を向けた法律の施行へと突き進んでいる。政府は国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の施行日を12月10日とする政令を閣議決定した。10日の自民党総務会で異論が出され、議論不足を理由に途中退席者も出るなど、党内でも意見が割れている。昨年12月の法案成立から10カ月余り、政府の手続きは疑問だらけだ。
 秘密指定する際の運用基準を議論する有識者らによる「情報保全諮問会議」は、メンバーが一堂に会したのは正式会合の2回と準備会合1回だけだ。メンバー7人は内閣官房職員と電話やメール、面会で意思疎通を図って情報を共有したというが、基準の素案公表時に出された協議内容には、詰めた議論が交わされた形跡はない。
 素案では意図的な情報隠しの告発の受け皿となる内部通報窓口の設置を盛り込んだが、あくまで行政組織内部の仕組みで、通報者が不利益を受けないような保護対策も不十分だ。拙速な作業のまま政府側が恣意的に特定秘密を指定できる悪法を施行させていいはずがない。
 沖縄では戦時中、「改正軍機保護法」によって言論統制が敷かれた。その結果、対馬丸の撃沈の事実が伏せられ、その後も疎開船の撃沈が相次ぎ、住民犠牲が拡大した。沖縄から見れば集団的自衛権行使容認と同じく、特定秘密保護法も日本が戦争への道を歩むための動きだと警戒するのが自然だ。
 民主主義を支えるための権力監視など新聞が果たす役割は、これまで以上に重要度を増している。だからこそ報道の自由を侵害する特定秘密保護法には「施行」ではなく「廃案」を求めたい。
 普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設など、沖縄が抱えている課題は多い。今後も沖縄の地方紙として知る権利を守りながら、生活者の視点を忘れずに多面的な報道に取り組みたい。