<社説>香港民主派排除 「高度な自治」の約束実行を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 香港の次期行政長官選の制度改革をめぐり、香港中心部の幹線道路占拠を続けた民主派のデモ隊を警察が強制排除した。

 当局は交通の正常化に向けた措置としている。だが催涙スプレーを使い、こん棒で殴りかかる暴力的な排除は行き過ぎである。冷静な対応を求めたい。
 1997年の中国返還後最大ともいわれる混乱の原因は2017年の行政長官選挙で民主派を事実上排除し、親中派が選ばれるように中国が介入したことにある。
 行政長官選挙で初めて1人1票の普通選挙が実施されることは前進である。しかし立候補資格を制限し、親中派以外が事実上立候補できないとあっては有権者の選択権は無いに等しい。普通選挙実施の意味を見いだすことも難しい。
 事態打開のため、香港政府とデモ隊を主導する学生側は正式対話実施で合意していたが実現していない。政府側は次期行政長官選をめぐる中国の決定撤回を議題にするよう学生側が求めたことを先送りの理由に挙げている。
 今回の大規模デモの根本要因を話し合わずして状況を打開できるはずはない。先送りは問題解決を長引かせるだけである。正式対話の実現に中国も理解を示してもらいたい。
 英国と交渉に当たった中国の実力者、☆(登の右に郊のツクリ)小平氏は返還後50年は香港の「高度な自治」を与えると約束した。その約束を着実に実行するべきである。
 中国は果たして約束を受け継いでいるといえるだろうか。香港基本法は、行政長官などの選挙制度は07年以降「必要があれば」変更できると規定しているが、中国は04年、改革実施の決定権は中国にあるとの「解釈」を採択した。そこに香港の「高度な自治」はない。
 この間、民主主義の大切さを知る香港人の中に「高度な自治」を空洞化させるような中国への不満がくすぶり続けているのである。
 9月28日から続いた大規模デモには世界的な共感が広がった。欧米諸国だけではない。デモが原則違法のシンガポールでも唯一認められている公園に100人以上が集まり、香港の民主派デモへの支持を訴えた。
 中国は「内政干渉」と反発するが、それでは国際的な理解は得られない。この事態にどう対処して収拾するのかを世界が注視していることを認識してほしい。