<社説>基地内立てこもり 米軍は説明を尽くせ


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 北谷町の米軍キャンプ桑江内で10月30日、米海兵隊員が自宅に立てこもる事件が発生した。米軍準機関紙「星条旗」は基地内住民の話として、隊員がM16ライフル銃を所持していたと報じた。

 沖縄防衛局と県警は基地内の事件だとして詳細な情報を把握していない。しかし現場は民間住宅地から400~500メートルほどの距離で、基地外にも危険が及ぶ可能性は大いにあった。基地内とはいえ、決して看過できない事件だ。
 「星条旗」によれば取締官はライフル銃と防弾服にヘルメットを着用して隊員の自宅に接近し、身柄を拘束した。基地内で盾を持った米軍関係者の姿も目撃されており、立てこもった隊員が危険物を所持していた可能性もある。
 1997年に定めた在日米軍による事件・事故の通報体制では、基地内で発生した場合、米軍が地域住民に影響を及ぼす可能性があると判断した場合に「好意的通報」を行うとしている。米軍が「影響ない」と判断すれば連絡する必要は生じない。
 北谷町が沖縄防衛局から連絡を受けたのは午後1時ごろだ。立てこもり事案が発生していることと、現在は包囲されていて安全性に問題はないとの内容だった。しかし隊員が身柄を確保されたのは午後0時55分で、連絡を受けた時点には既に事件が解決していたとみられる。
 事件が起きたのは午前中で、隊員が立てこもっている間、基地内の住民は避難していた。しかし金網を隔てた民間地の住民は事件が起きている最中は何も知らされず、危険な状態のまま蚊帳の外に置かれていたことになる。これでは通報があっても意味がない。
 立てこもり事案があったことは伝えられても、隊員の性別、階級、銃器の所持などについての詳細は明らかにされていない。米軍が説明を尽くしたとは到底言い難い。
 基地内で犯罪が起きた場合、当事者が米軍関係者なら第1次裁判権が米側にあり、日本側が捜査に関与することはできない。しかし隊員がライフルを所持し、発砲し、流れ弾が基地外に飛んで住民が被弾したら誰が責任を取るのか。基地内の事件として片付けられる問題ではない。
 隊員がM16ライフルを自宅に所持していたならば、米軍の武器管理の不備も問題となろう。米軍は速やかに説明責任を果たすべきだ。