コラム「南風」 フリースタイル出産


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 現在、多くのお産は分娩(ぶんべん)台の上で行われています。しかし、分娩台は産む人の快適さより、お産を介助する人にとって都合が良いように作られています。産む人はあおむけに寝かされてしまうため、赤ちゃんを産み出す力を発揮しにくくなることがあります。

分娩台を使わないお産では、出産する女性が主役です。産む人が自分の好きな体勢を取り、自分自身の力を最大限に使うことができるので、分娩台の上よりも赤ちゃんが生まれやすい体勢がとれて、より主体的にお産に向き合うことができます。これをフリースタイル出産といいます。
 フリースタイル出産の場合、分娩台の上とは異なり、自由に体勢を替えることができます。腰が痛くてつらいときは、楽な体勢になって腰を押してもらうと痛みが和らぎます。お産がなかなか進まないときも、陣痛の合間に楽な体勢で休むことも可能です。赤ちゃんがとても大きいときには、赤ちゃんの頭が出てきても肩がなかなか出てこないことがあります。そんなときは産婦さんに立ち上がってもらって、重力の力を借りながら最大限に息みます。すると、それまでうまく出てこられなかった赤ちゃんが、お母さんと重力の力を借りてするりと出ることができるのです。赤ちゃんの頭が出たまま、夫の助けを借りながらすっくと立ち上がる産婦さんの姿には、女性の力の素晴らしさを感じます。
 お産を通して、女性はよりよく生きるチャンスを得ます。さらに、赤ちゃんと一緒に自分も生まれ変わったと感じることもあります。自分の力で赤ちゃんを産み出すことで、自分の能力を見直し、自信を持って育児をスタートさせることができるでしょう。育児がつらいと感じたとき、お産で得た自信は、きっとそれを乗り越える大きな力になるはずです。
(島袋史、ゆいクリニック院長産婦人科医)