<社説>衆院選 消費税 再増税の是非を論じよ


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 安倍晋三首相は消費税再増税の延期を理由に衆院を解散し、総選挙の争点に据えた。首相は2017年4月には必ず税率を上げると明言している。しかし、景気低迷の中で国民生活は再増税を許す環境にあるのか、選挙戦で厳しく問われなければならない。

 ことし4月の消費税増税は自民、民主、公明の3党合意で成立した「消費税増税法」によるものだ。少子高齢化を見据え、社会保障制度の改革に取り組む「税と社会保障の一体改革」がその趣旨だった。
 だが安倍首相は景気腰折れを防ぐ経済対策として公共投資拡大に重点を置き、社会保障改革を先送りにしたまま増税した。自らの経済政策「アベノミクス」による景気浮揚を優先し、社会保障改革という国民との約束はほごにされた。半面、70~74歳の医療費窓口負担が引き上げられるなど、国民に負担を強いる制度が先行した。
 弱者切り捨ての増税は景気の急激な冷え込みを招いた。国内総生産(GDP)は2四半期連続でマイナス成長に陥った。個人消費の低迷が響いている。企業の賃上げは物価上昇に追い付かず、実質賃金は目減りしている。
 再増税先送りは、そもそも消費税増税法の「景気条項」に沿って判断すれば済む話だった。選挙戦では低所得者層への支援を後回しにした4月の増税の妥当性をあらためて問い、その上で17年の再増税の是非を論じ合うべきだ。
 消費税の逆進性を考えれば、食料品などの生活必需品の税率を抑える軽減税率を早期に導入すべきであった。自公は17年度中の軽減税率を公約に掲げた。国民生活に直結するだけに、野党も軽減税率に関する姿勢を明確に示し、与党と具体的な議論を交わしてほしい。
 再増税分を財源に充てる予定だった子育て支援制度や介護従事者の処遇改善、認知症対策についても論戦を深めてほしい。子育て世代や高齢者がいる世代を支える重要な施策であり、優先的に着手する必要がある。再増税に代わる財源の捻出を含め、具体策を国民に提示すべきである。
 厳しい経済状況の中で再増税が本当に必要なのか、各党とも論戦を尽くしてほしい。それは行財政改革の議論が伴うものでなければならない。国民だけに負担を押し付ける再増税ありきの議論では誰も納得しない。身を切る覚悟を国民に示すべきだ。